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2021年8月15日 (日)

国宝がわからない

三菱一号館美術館は、いつもは近代の西洋美術の展覧会をやっている。ヴァロットンやシャルダンなど貴重な個展も多かった。ところが今回は「三菱の至宝」展として、三菱グループ全体が持つ日本美術を集めていた展覧会を9月12日まで開催している。「国宝、集結。」のキャッチコピーに惹かれた。

ちらしによれば、「日本の芸術文化の研究・発展のために三菱創業の岩崎家四代が集めた、三菱ゆかりの静嘉堂、東洋文庫の国宝12点を含むコレクション」。私は実は静嘉堂文庫美術館は行ったことがなく、東洋文庫も一度きりなので、チャンスだと思った。

「国宝」というのは、見に行った展覧会に国宝の作品があると自然に「ありがたい」と思ってしまう。これが12点ならさぞありがたかろう。ちなみに日本に国宝はいくつあるのかネットで調べたら、建造物が227件、美術工芸品が897件という。確かに多くはないかもしれない。

さて今回の国宝だが、いわゆる漢文の文書のようなものが多くて困った。12点のうち7点がそうで、《春秋経伝集解》は平安時代のもので社預の注付きらしいが、何のことかわからない。カタログを買えば意義はわかるだろうか。素人目にも司馬遷の《史記》は重要そうだが、ただの漢文の習字にカナが付いているだけにしか見えない。

この2点もそうだが、こういう重要な文書は東洋文庫の所蔵に多い。「文庫」と名付けるくらいで、実際に東洋文庫に行ってみるとひたすら本が並んでいて、部屋の四方に天井まで本が並ぶ美しい部屋が見られる。個々の古書は挿絵があると楽しめるが、文字だけだと私にはありがたみはわからない。

国宝の美術工芸品のうち、書跡・典籍が228件、古文書62件、考古資料48件とある。今回の7点がどれに当たるのさえ私にはわからないが、とにかく国宝の1/3を占めるようだ。私がわからない日本美術で書に次ぐのが刀だろう。今回の国宝では《太刀 銘 包永》だが、これは前期展示だった。

今展示中の刀3点はいずれも静嘉堂所蔵の重要文化財だったが、やはりよくわからない。この展覧会の国宝のなかで私でもわかる絵画は3点で、うち後期も見られるのは2点。ありがたみがあったのは、元の時代に中国で描かれた水墨画《禅機図断簡 智常禅師図》。弟子が禅師を訪ねている感じは素人にもわかる。ネットで見たら、この作品はバージョンが5点あって、静嘉堂のほかに東京国立博物館、根津美術館、畠山記念館、石橋財団が所有しているらしい。

もう1つの絵画は俵屋宗達の《源氏物語関屋澪標図屏風》だったが、宗達ならばもっと派手な作品をいくつも見ているので、さほど感激はしなかった。もう1つは陶芸で南宋時代(12~13世紀)の《曜変天目》。これは有名だと思う。茶碗の中に黒と青の小宇宙が広がるような無限の感じがある。

展覧会では、この作品を際立たせるために、手前に光を落とした暗い通路を作り、展示されている部屋も暗くして作品のみが輝くようなLED照明を巧みに使っていた。これはやはりありがたみがあった。しかし、やはり国宝はわからない。

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