『MINAMATA』に涙する
9月23日公開のアンドリュー・レヴィタス監督『MINAMATA』の試写を見た。去年のベルリン国際映画祭で上映された時から話題になっていた。あのジョニー・デップが写真家のユージン・スミスを演じ、水俣病の患者たちを写真に収めてゆく話だから。
映画は1971年、「ジーン」と呼ばれるユージン・スミスが、「ライフ」誌の編集長と口論をするところから始まる。既に功成り名遂げた老写真家が酒浸りになって金に困り、編集長を困らせる図だ。それから自分のスタジオで日本のCM用にコメントをもらいに現れた日本人と話すうちに、水俣病の存在を知って衝撃を受ける。
いかにも気取り屋のヤンキー・アーチストといった感じのジーンだが、そのまま依頼人の女性、アイリーンと水俣を歩き始める。一見横柄でチッソの会社の人間は馬鹿にしてるが、庶民に対しては腰が低い。次第にジョニー・デップであることを忘れてしまう。
チッソの工場附属病院に潜入して、ゲリラ的に医者のいない病室を巡って患者たちを撮り、ラボではチッソ側が動物実験で排水から中毒があることを知っていたというレポートまで発見する。社長に迎え入れられて、5万ドルと引き換えにネガを寄こすという取り引きを持ちかけられるが、拒否する。
一方で集会をしてデモをして訴訟を起こそうとするグループも追う。彼らはジーンがこの実情を世界に伝えてくれることを期待して協力するが、自分の子供は撮って欲しくないという者もいる。ジーンはどんどん撮り溜めるが、ある時とんでもない邪魔が入った。
演出はオーソドックスだが、いささかドラマチックに構成し過ぎだ。それでも映像が胸を打つのは、患者たちの悲惨な状況を正面から捉えているからだろう。時おり挿入されるニュース映像と比べても遜色がない。
そして日本の俳優たちの存在感がすごい。水俣へ到着したジーンとアイリーンを妻と共に迎える男は浅野忠信、チッソに抗議をする運動の中心人物は真田広之、自らも胎児性水俣病で手が震えながら映像を撮る青年に加瀬亮、チッソの社長に國村隼と国際派が勢揃い。彼らが熊本弁と英語を話す姿はそれだけで感動的だ。
ジーンはいくつもの決定的なシーンを写真に収め、それを見た「ライフ」の編集長はその迫力に驚愕してしまう。「ライフ」は印刷されて世界中に広がり、真田は裁判所から「勝訴」の紙を掲げて走り出てくる。もう、涙が止まらない。
「怨」という文字の旗や死者の写真を掲げた患者たちを見た時、土本典昭の何本もある水俣のドキュメンタリーを思い出す。もちろんこの映画は土本の映像の迫力に比べたら弱い。それでもこれだけのスターが出て、劇映画として再び水俣を撮ることは意義がある。最後にクレジットに出てきたように、これは福島原発事故にも連なる企業による健康被害の歴史のある意味で最初に位置するからだ。
我々は何度でも水俣のことを考える必要がある。そう思った。
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