ギリシャ映画『テーラー』にニヤリ
『テーラー 人生の仕立て屋』は予告編でテーラー役の主人公の佇まいがいい感じだったので、見に行った。ソニア・リザ・ケンターマンという女性監督の初長編というのも気になった。今年は女性初監督の秀作が多い。
これがなかなか気の利いた佳作で、ニヤリとした。ニコスはアテネで高級紳士服店を父親の代からやっているが、客はおらず銀行からは借金のために差し押さえの通知が来る。そこでニコスは屋台を使って町中で売ろうと考える。この映画がいいのはその屋台自体もニコスが作るところで、服作りだけでなくあらゆるところに手作業の場面が入っている。
最初は大通りを屋台を引いて本当に危ない。偶然寄って来たのは娘のウェディングドレスを作ってくれないかという魚屋で、今度は日本製のバイクに屋台をつないで郊外の家に行く。ウェディングドレスはもちろん未経験だが、同じアパートのロシア語を娘と話す主婦オルガが関心を持って手伝ってくれた。
屋台のウエディングドレス屋は当たり出し、オルガもその娘のヴィクトリアも大忙し。ドレスを作った女性の結婚パーティーに3人は呼ばれるが、ニコスとオルガは自然に踊り出し、ヴィクトリアは機嫌が悪い。このままニコスとオルガはうまくいくのかと思うが、ヴィクトリアの告げ口でオルガの夫が出てきて邪魔をする。
いつもお洒落で首から巻き尺を垂らし、誰に対しても紳士的で寡黙なニコスがいい。感情を顔に表さないが、淡々と物事を進める姿がどこかコミカル。彼の佇まいと同じく、映画も説明しない。ニコスとオルガの感情の高まりも、いくつかの点描のようなシーンで見せるだけだし、終盤に夫が登場して破綻へ向かうのも、いくつかのシンボルを見せるだけ。
アテネは首都のはずだが、小さな地方都市のようでのどか。庶民は金がなさそうだが、それでもお洒落を楽しみ、人生を謳歌している様子が伝わってきて、見ていて心地よい。ニコスがそんな女性たちのためにせっせと働く姿も嬉しくなる。病気になったニコスの父はパジャマにポケットチーフを差すようなお洒落で、その友人2人も負けていない。
控えめだが毎日を楽しく生きる人々を抑制された演出で爽やかに見せる101分だった。
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