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2021年9月 9日 (木)

躊躇しながら『中国「見えない侵略」を可視化する』を読む

本屋で何となく気になって買った新書が、『中国「見えない侵略」を可視化する』。「読売新聞取材班」編なので嫌中本に近いかと思ったが、まあ新聞だからそんなにひどくはないだろうと読み始めた。時々、右寄りの政治的な方向がかいま見えたので、半分躊躇しながら、でもおもしろく読んだ。

「千人計画」というのがある。「世界トップの科学技術強国を目指して海外から優秀な人材を集める中国の国家プロジェクトだ」。今年初めの読売新聞記事だと、日本からは2000年末までに44人が参加しているという。多くは東大、京大、東工大などの元教授。

彼らは破格の厚遇を受けている。「約35万円の家賃のほとんどは中国政府の予算で支払われ、ビルには温水プールやジムも併設されている」「千人計画の五年分の研究費約二億円と、中国の科学技術研究費からさらに4800万円を受け取った」。

「今回確認された44人の中には、中国軍に近い「国防七校」と呼ばれる大学に所属していた研究者が8人いた。/国防七校とは、中国の軍需企業を管理する国家国防科学技術工業局に直属する北京航空航天大、北京理工大、ハルビン工業大、ハルビン工程大、南京航空航天第、南京理工大、西北工業大の七大学を指す」

そして44人の中には、日本の科学研究費(科研費)を受けた者が多数いた。科研費とは文科省が出している研究助成金で年間約2200億円という。44人のうち、13人に渡った科研費の総額は45億円になる。つまり日本の税金でやった研究の結果が中国に漏れている可能性が高い。この本によると、アメリカではFBIがこの件を操作し、極端な場合は教授を起訴しているらしい。

中国は千人計画の外国人研究者にも中国の大学として論文を発表するよう義務付けている。中国の論文数が増えているのはそのためであるようだ。私などは、まあいいじゃないの、とも思う。かつて日本も明治初期に「お雇い外国人」を高給で呼んできたわけだし、それで20世紀の日本の発展があったのは間違いない。

この本は日本学術会議が「軍事目的のための科学研究を行わない」宣言を守っていることを批判する。そして20年9月に6人の新会員が任命を拒否されたことを半分くらい擁護する。おい、おい、調子に乗ってはいけませんと言いたくなるが、安倍・菅政権の気持ちとしては繋がっているかもしれない。

そのほか、世界各国で中国語を教えるために中国が経費を出している「孔子学院」は怪しいとか、中国のIT機器は世界の情報を収集しているとかという半分想定の話になる。そしてことあるごとにアメリカはファーウェイを排除したりして対処しているが、日本は能天気と繰り返す。

「おわりに」には「読売」の政治部長が書いている。「今の中国・習近平政権のふるまいは、かつての中華帝国をみるような覇権主義を強めている。軍事的な圧力を強めようとしてきた時、日本にちょっかいを出したら痛い目にあうぞ」と思わせるだけの防衛力を整備し、毅然として守り抜く覚悟を持つことが欠かせない」「無防備に日本の技術を流出させてしまうことなど言語道断である」

これはやはり私とは合わない。この本は新潮新書から出ているが、子会社の中央公論新社はこの内容をさすがに断ったのではないか。さすが新潮社と思ったら、私の美術展の本も同じ新潮新書だった!

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