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2021年10月11日 (月)

著作権について:その(1)

大学で映画を教えている時、著作権について話すことがある。「なぜ2000円で10本セットのDVDボックスを売れるのですか」と聞かれたら「著作権が切れたからです」と答えて、1953年までに発表された映画は原則として著作権は消失していると説明する。

1953年までに公開された映画は、50年たった2003年末で著作権が切れている。ところが2004年からは著作権法の改定で、1954年以降に発表された映画は発表後70年となった。1953年といえば映画の黄金期で、アメリカでは『ローマの休日』や『シェーン』、日本では『東京物語』や『君の名は』が作られている。それらはみんな安売りDVDで売られている。

小説や美術は著者や芸術家の「死後」50年とか70年だが、映画の場合は「公開後」となる。なぜなら映画は集団の創作物なので、関わった全員の「死後」を確定するのは無理だから。映画の場合はハリウッドの強い圧力で2004年から公開後70年になったが、小説などの個人の著作物はTPPの関係で2018年から死後70年に伸びたはず。

いずれにせよ、絵画や小説の著作権は長い。例えばピカソのように1973年に91歳で亡くなった場合、死後70年だと2043年まで著作権がある。さらに戦勝国には「戦時加算」があって、日本が参戦した1941年からサンフランシスコ講和条約発効の52年4月まで10年強が足されるはずだから、2053年頃か。

そうなると子供や孫どころか、曾孫あたりまで著作権料が入って来ることになる。これはよくないと思うのだが、なぜ70年に伸びたのだろうか。欧米の先進国の著作権収入のためだろうか。かつて展覧会をやっていた頃、「ピカソとシャガールは著作権料が2倍」「マティスはチラシやカタログの色校正を著作権者に送る」という常識があった。

今考えてみると、マティスは1954年に亡くなったのだから、戦時加算を入れても2014年に切れている。すると今では色校正は送らなくていいのだろうか。私にとって美術展の著作権者で一番厄介なのはベルギーの画家、ルネ・マグリットだった。マグリットには子供がおらず、当時の著作権者はマグリット夫妻に気に入られた元運転手という噂だった(本当かは聞く勇気がなかった)。

私より10歳くらい上のこの男性はかなり難しく、展示作業にもやってきてこの作品は別の場所の方がいい、などと「指導」した。本来はその権利はないはずだが、揉めると面倒なので言われる通りにした。その時のベルギー人の展覧会監修者がそれを認めていたこともあったが。マグリットは1967年に亡くなったが、戦時加算を加えたら2027年までになり、そうなると死後70年なので、2047年となる。いやはや。

映画ではピエロ・パオロ・パゾリーニの全映画を上映しようとした時に大変な目にあったが、それは後日書く(かも)。

 

 

 

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