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2021年10月20日 (水)

「よみがえる台湾語映画の世界」に参加して:その(4)

もう1度だけ、忘れないうちに台湾語映画の話を書く。この特集では辛奇監督が4本、林搏秋監督が3本上映された。なぜか2人とも戦前に日大に留学している。辛監督は演劇、林監督は政治経済を学んだという。一言で言えば、辛監督はホラーやダークな映画に強く、林監督はコテコテのメロドラマを作る。

『夫の秘密』(1960)は不幸な女性を描いたお涙頂戴ものだが、構成がなかなか巧み。冒頭は女性たちの同窓会で、そこにいないレーフンが話題になる。親友だったチウビーはその後偶然に彼女に会い、家に連れてくる。レーフンは妊娠後男に逃げられたシングルマザーだった。ある時チウビーの夫のシンギーは家に来たレーフンを見て驚く。それは彼のかつての恋人だった。

レーフンは台北を出て松山(日本ではなく台湾の地名で台北郊外)に去るが、そこでもある料亭で勤めていたところ、宴会にやって来たシンギーに会い、2人は関係を持ってしまう。レーフンはさらに板橋(これも台北郊外)に行くが、そこで知り合った友人の女性は妊娠したレーフンが病院で死にそうなのを見て、息子が持っていたバッジからシンギーを探し出す。

チウビーを連れて病院に行ったシンギーは、レーフンのお腹の子の父親が自分であると言う。シンギーはショックを受けるが、最後にはその子供を預かる。レーフンは息子の本当の父親と再会する。いやはやこれでもかというメロドラマで、ナレーションも多く音楽は冒頭に朗々と響くヴェルディの「ラ・トラヴィアータ」など、クラシックが多い。

『五月十三日 悲しき夜』(1965)もまた1人の男を2人の女が愛するメロドラマだが、ずいぶん洗練されている。2人の姉妹から愛される男を演じるのは『夫の秘密』でも2人の女に好かれた張瀋陽という俳優だ。母を亡くし、姉のレナはナイトクラブの歌手をしながら、妹を育てる。妹のショチンは学校を出て薬品会社に就職し、その主任のプンピンを好きになる。

プンピンは前からレナのことが好きで、2人は海などへデートする。5月13日の祭の日にレナはプンピンを自宅に招待するが、妹はそれが主任だと知って驚き、嘆く。レナは身を引こうとするが、レナを追い回していた大会社の社長が殺されてやけ酒で酔ったショチンと同じホテルの部屋で発見される。レナは自分が殺したと主張するが、裁判で「私が殺した」という社長の秘書が現れる。

社長がやくざを雇ってプンピンを襲わせたり、嫉妬した秘書が友人とレナをいじめたりとコテコテだが、全体に展開が自然でよくまとまっている。レナたちが住む家で大家の子供が「大陸に反撃せよ!」という歌が出てくるのはおかしかった。

『危険な青春』(1969)は辛監督にしてはいま一つ。冒頭、バイクの後ろに女を乗せて突っ走る青年、クエヴァンがその女に捨てられる。彼女と行ったガソリンスタンドの休憩所に勤める20歳のチンビーに目を付けて、知り合いの女性、ギャクシャンが経営するバーに売り込む。チンビーは妻を亡くした社長の愛人になって、クエヴァンはお金を手にする。

愛人になる前にチンビーは好きになったクエヴァンと関係を結ぶ。一方、クエヴァンは男好きのギャクシンともできてしまう。最終的にクエヴァンはチンビーを選び、貧乏でも生きて行こうとする。

この映画でバーに来る金持ち以外はみんな怪しい仕事をしている男女ばかり。考えてみたら、今回の3本にはすべて水商売の女が出てくる。メジャーな北京語ではない台湾語映画は、台湾の裏の世界が描くのが得意のようだ。そこにギャング、メロドラマ、ホラーが絡まる。それは小津安二郎や黒澤明ではない、60年代の日活や東映の映画に近い。

別件だが、朝日新聞デジタル「論座」に書いた東京国際映画祭についての文章が昨日アップされたのでご一読を。明日10時まで全文無料のはず。

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