« 還暦になって:その(12)急に冬になって | トップページ | 還暦になって:その(13)歯の話 »

2021年10月22日 (金)

オンラインで見る山形国際ドキュメンタリー映画祭:その(3)

山形ドキュメンタリー映画祭は始まったと思ったら、14日にはもう賞が発表された。やはり現地に行かないで日常生活の中で過ごしていると、あっと言う間だ。ロバート&フランシス・フラハティ賞(大賞)は、匿名の「香港ドキュメンタリー映画製作者」による『理大囲城』。

私はてっきりフレデリック・ワイズマン監督の『ボストン市庁舎』だと思っていた。この映画は既に試写で見てここに書いたように、ワイズマン監督のなかでも近年久しぶりに気合いが入ったものだったから。そうでなければ今回見て書いたヤン・ヨンヒ監督の『スープとイデオロギー』ではないかと思った。

『ボストン市庁舎』は大賞でもその次の山形市長賞(最優秀賞)でもなく、その次の優秀賞で、『スープとイデオロギー』は無冠だった。ちょうど発表された14日の夜までプレスのオンライン試写を見ることができたので、山形市長賞の『カマグロガ』を見た。スペインのアルフォンソ・アマドル監督の作品だ。

これが拍子抜けするくらい普通の映画だった。小さな村の日常をただ撮るだけ。その意味では中国のジャン・モンチー監督『自画像:47KMのおとぎ話』に近かった。違いはほとんどが固定ショットで、すべて美的に計算されたショットだったこと。何度も出てくるが、暗い倉庫の四角い窓から緑の畑が出てくるだけで美しい。

もう1つの違いは『自画像』は大家族だが、この映画にはおじいさんのアントニオと娘のインマしか出てこないこと。広大な畑を2人で耕し、収穫している。映画は秋、冬、春、夏、秋と1年あまりを見せる。

さらに違うのは、この畑の周りには高速道路が走り、特急電車も通る線路があること。まるで都会の中に忽然と現れたスポットのような感じで、いかにも現代の農業を象徴している。好きだったのは、この農業の映画を小学校で見せる場面。

そこにはインマの息子が生徒としていて、インマは説明に来ている。その映画を見ながら子供たちが農業について学んでいる。この忍耐強そうな40歳前後のインマの夫はどこにいるのだろうか。何の説明もなく、3人で暮らしている。

香港の『理大囲城』が大賞というのは、政治的選択だろう。日本の映画祭がこのような作品を選ぶことは、何らかの圧力にもなる。国際映画祭にはこういう役割も求められているので、いいと思った。2位の『カマグロガ』は美学的選択だろうか。

それならば政治的にも美学的にも強い『スープとイデオロギー』にも賞が欲しかった。まあ、国際映画祭の賞とはどうしてもそんなものだけど。

|

« 還暦になって:その(12)急に冬になって | トップページ | 還暦になって:その(13)歯の話 »

映画」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 還暦になって:その(12)急に冬になって | トップページ | 還暦になって:その(13)歯の話 »