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2021年11月 4日 (木)

東京国際映画祭はどう変わったのか:その(4)

コンペを半分くらい見て、だいたいの傾向がわかってきた。一言で言えば、ジャンル映画と前衛(または審美的)映画にリアリズム映画である。1去年までコンペを担当していた矢田部氏の時はウエルメイド志向が見られたが、今年は少ない。ここで既に触れた『ザ・ドーター』はジャンル映画だし、フィリピン映画『アリサカ』もサスペンスたっぷりのジャンル映画と言えよう。

『アリサカ』のミカイル・レッド監督は、前作『バード・ショット』がすばらしかった。今回も「射撃をする女」が主人公となるが、マリアーノは副市長を護送中に襲撃に会う。副市長はスキャンダルを証言するために向かっていたが、反対派の雇った警察が殺したのだった。1人生き残ったマリアーノは少数民族に助けられるが、追手は迫って来る。

最後はマリアーノが元上司との壮絶な一騎打ちというアクション映画だが、舞台は「バターン」でかつて日本兵が「死の行進」を強いた場所。その歴史が大きな意味を持つうえ、少数民族の問題も浮上。ジャンル映画に歴史性と社会性を加えている。そのうえバターンの森の撮影が何とも美しい。4点。

期待のアベルゼイジャンのヒラル・バイダロフの『クレーン・ランタン』は前衛映画の代表だろう。法学を学ぶ学生ムサは、4人の女性を誘惑して収監されたダヴから話を聞く。その4人の女たちも出てきて、ダヴの話をする。その話がすべて哲学的でよくわからないが、全編が謎の魅惑に満ちている。

そもそも冒頭の海底油田の光景に目を奪われる。森の中の池、廃墟となったビル、川の岸辺、雪の中の道など、出てくるすべてのショットが限りなく美しい。6人の会話を聞いていると、女たちはダヴの根源的な思考に惹かれて日常を捨ててダブについて行ったかのよう。学生のムサはそれらの話を聞いて人生に絶望し、軍隊に行く決心をする。4.5点

カザフスタンのダルジャン・オミルバエフ監督『ある詩人』もまた前衛映画と言えるだろう。こちらは新聞社で働く若い詩人ディダルが主人公で、彼が調べている19世紀の詩人、マハンベトをめぐる100年をまたぐいくつものエピソードがその毎日に挿み込まれる。

その毎日の中にも夢が混じりこむし、現実のなかでも地方に詩の朗読会に招待されてゆくと客が1人しかいないが彼の熱烈なファンだとか、ありえないような出来事ばかり。本を読む人がどんどん減ってゆく現代における詩人という存在の危うさが浮かびあがる。大きなドラマもなくわかりにくい映画だが、絶望した詩人の諦念の表情が心に残る。3点。

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