ドイツ映画祭で『異端児ファスビンダー』を見る
昔、「ドイツ映画祭」をやったことがあった。2005年が「日本におけるドイツ年」というので、2001年から始めた「イタリア映画祭」と同じように有楽町朝日ホールで始めた。もともと東京のドイツ文化センターで「HORIZONTE」という名でその前からやっていた映画祭の拡大版だった。
ドイツ映画祭を3年間やって現代ドイツ映画に急に詳しくなったが、最も才能があると思った監督がオスカー・レーラーだった。彼の『アグネスと彼の兄弟』(2004)と『素粒子』(2005)に深く感動した私は、ベルリンに行った時に彼の自宅まで行って映画祭カタログのためにインタビューをした。
この2本は日本でDVDが出ているが、この監督の作品はその後はほとんど聞かない。ネットで見ると5、6本作っているようだが、たぶん日本では映画祭でも上映されていないのではないか。そうしたら今回「ドイツ映画祭2021」の中に彼の新作『異端児ファスビンダー』があったので、会場のユーロライヴに駆けつけた。
この映画は2020年の開かれなかったカンヌに選ばれているが、まだ日本公開の噂は聞かない。見てみるとそれなりにおもしろかったが、とにかく酒とドラッグとゲイの世界で確かに日本での公開は難しいかも。
1969年、22歳のファスビンダーはミュンヘンで演劇のリハーサルをしている。脚本家兼演出家だが、酒を飲んで俳優を罵って追い出す。どこまでが芝居でどこまでが現実かよくわからない。それから突然映画を作り出す。彼の周りにはプロデューサーやカメラマンや俳優がたむろして酒を飲みドラッグをやるかと思うと、いつの間にかカメラが回っている。
華やかなシーンはなく、カンヌでも自分の上映に立ち会わずホテルで酒を飲んで帰って来た女優たちが「絶賛だった」と言うのを嬉しそうに聞く。映画のたびに男優を見つけて好きになる。しかし彼と仲の良かったモロッコ人のサレムは刑務所で自殺し、黒人のアルミンも死んでしまう。それを聞く時のファスビンダーの悲しそうな顔。一人で街を彷徨い、ある女装したゲイが男に捨てられて泣いているのを慰めるシーンもいい。
しかし映画の大半は飲んでドラッグをやって仲間とグダグダと話すシーンで、見ていて辛い。『不安と魂』『秋のドイツ』『マリア・ブラウンの結婚』『ケレル』などかつて私が見た映画の撮影シーンも出てくるが、全体に同じトーンを繰り返す。
一番の問題は22歳から亡くなる37歳までのファスビンダーを演じたオリヴァー・マズッチが、どう見ても50代で太鼓腹なこと。死ぬ直前のファスビンダーの写真は確かに不気味に太ってはいるが、やはり違う。この違和感がなかったら、それなりにおもしろかったのに。あと、後半に出てくるハンナ・シグラ役の影が薄かったのも残念。
それにしてもファスビンダーの映画は1980年代後半に10本は見ているはずだが、その後は全く見ていない。見る気が起こらないのはなぜだろうか。
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