映画祭の合間に読んだ『映画の旅びと』
東京国際映画祭の上映の合間に読んだもう1冊の本が、ショーレ・ゴルパリアン『映画の旅びと イランから日本へ』。これまた「朝日」の石飛徳樹記者が読書欄で紹介していた。彼の書く本はどれもわかりやすく、おもしろい。
著者のショーレ・ゴルパリアンさんは、イラン映画といえば必ず出てくる女性だった。アッバス・キアロスタミやアミール・ナデリなどイランの監督が来日すると、かならずそばにいる。毎回のようにイラン映画を上映する東京フィルメックスには、スタッフのように常駐していた。
私が最初に会ったのはこの本にも出てくる「'96 イラン映画祭」の時ではないか。土肥悦子さんが強引に進めた企画だが、私はほとんど何もできなかった。それからこれも書かれているが「小津安二郎生誕百年記念国際シンポジウム」の時に、キアロスタミ監督の通訳をしてもらった。
正確に言えば、キアロスタミ監督は直前に歯が痛いと言い出した。彼はほんの一言挨拶しただけで舞台を降り、その後はショーレさんが彼の言葉を聞き取って日本語に直したものを蓮實重彦さんが代読したと思う。
この時キアロスタミ監督はNHK製作で新作『5 five~小津安二郎に捧ぐ~』を作ってその公開のためにNHK負担で来日していたので、「朝日」のイベントに出ることに違和感を持ったのではないか。だからあえて舞台に出なかったのではないか。前日に渋谷のエクセルホテル東急で私と会った時の気まずそうな印象から、私はそう思っている。
私は2、3回少しの間だけ会っただけだが、彼には謎の印象を持っている。この本を読むとその謎がわかるとというか、ショーレさんのような身内にもわからない天才的な部分があったことがわかる。映画自体にもどこか詐欺師のような部分があった。
ショーレさんとの話に戻ると、実は私は彼女を助けたことがあった。2007年秋、麻生久美子さんがイランで主演を演じたアボルファズル・ジャリリ監督の『ハーフェズ/ペルシャの詩』がローマ映画祭に招待され、麻生さんも行くことになった。当然プロデューサーであり、現地で通訳もやるショーレさんがいないと話にならない。
ところが東京のイタリア大使館からはイラン人にはヴィザが出なかった。製作・配給のビターズ・エンドの定井社長さんから「大使館に圧力をかけてくれ」と言われた私は懇意にしていた文化参事官の女性に電話をして、彼女がいかに重要かを訴え、これを認めないと私は翌年イタリア映画祭をやめるとまで言った。その結果、ヴィザは例外的措置で出た。このことはショーレさんも知らないだろう。
この本にはキアロスタミを始めとしてイランの監督たちのトリビアが詰まっている。10本ほどの合作のエピソードも満載だ。それらについては後日書く。
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 『過疎ビジネス』に蝕まれる日本(2026.04.14)
- 椹木野衣『戦争と万博』の世界観(2026.04.02)
- 『アルジェリア戦争』を読む(2026.03.29)
- 高橋源一郎『ぼくたちはどう老いるか』にめまい(2026.03.19)
- 遠藤周作『留学』に考える(2026.02.01)
「映画」カテゴリの記事
- 『プロジェクト・ヘイル・メアリー』は不思議なSF(2026.04.08)
- 初期アサイヤスに震える:続き『無秩序』(2026.04.12)
- 『自然は君に何を語るのか』の自然とは(2026.04.04)
- 『金子文子』の迫力(2026.03.31)


コメント