和田誠展に驚く
12月19日まで東京オペラシティアートギャラリーで開催の「和田誠展」を見た。たぶん「朝日」で紹介記事を読んで見たくなった。平日の2時頃に行ってみると、当日券を買う人の列ができていて驚いた。老若男女、まるでデパ地下のような「普通の人々」が並んでいた。
この美術館は現代美術の展覧会が多いが、明らかに客層が違ったうえに、いつもの何倍も客がいた。元展覧会屋のカンだと平日で3000人、土日でその倍くらいではないか。この美術館がこれほど込んだのは見たことがない。
中に入ると、作品の多さにまた驚く。最初の展示室の左手には彼の描いた似顔絵が壁の一面に天井まで飾ってあり、真ん中には年表の柱が20本ほど立っていて、幼少期から説明している。その両側の100メートルほど壁には年表の柱に合うポスターや本や広告の原画が並ぶ。
次の展示室に入って新宿日活名画座のポスターが50枚ほどあって、見とれてしまう。お金がないのか1色か2色で仕上げてあるが、大づかみなイラストと共に実にお洒落。思わずスマホで写真に撮る。
その次は100メートルくらいの壁に「週刊文春」の表紙が並ぶ。約40年やっていたというから、200点を超す。こちらは年配の読者を意識してか、ちょっとした草花とか動物とかが多い。私は新聞社勤務時代は15年ほど「週刊文春」を毎日買っていたから、あの表紙は実になじみ深い。
その裏側に本の装丁、草月アートセンターなどのポスターがある。映画監督作品も2本あるし、短いアニメや作曲した楽譜もある。その反対側はありとあらゆるポスター。最後の細長い通路には著書200冊が並び、企業のロゴマークや家族のために作ったセーターなどまで展示してある。
展示総数は約2800点というが、この仕事量は凄まじい。普通に考えたら、食べて寝る以外はいつも仕事をしていないとできないはず。展示してある作品すべてが和田誠調というか、独特の大づかみでユーモラスなタッチで、手を抜いたものがない。
いわゆる美術作家と違って、すべてが注文仕事。それなのに、自分のトーンを壊さずにどこにも彼らしさを残す。作り手、クリエーターとしては最高のように思えるが、実際はどうだったのだろうか。2019年10月に83歳で亡くなっている。
この展覧会は来年から翌年にかけて熊本市、北九州市、新潟市などを巡回する。各地で人を集めるのではないか。
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