還暦になって:その(20)同じ映画を2度見る/『ジャネット』
ブルーノ・デュモン監督の『ジャネット』を見た。正確に言えば、初めてだと思っていそいそと見に行ったら、見終わってから2年前に見ていたことを思い出した。考えてみたら、今年はこんな体験は2度目。ホン・サンスの『逃げた女』を6月に見に行ったら、去年の東京フィルメックスで見ていたことがわかった。
ただし、『逃げた女』の時は見ている途中、キム・ミニがアート系の映画館に行ったあたりで「これは見た」とピンと来た。今回は何と終わって帰り道に「おかしい、これは初めてでないかも」と思い始めた。帰りの地下鉄で自分のブログを検索して2年前の今頃に見たことが判明した。映画を見たか覚えていないとは、まさに還暦である。
帰り道に、「これはアンスティチュ東京で見るような映画だな」「いや、見たかもしれない」と思った。ブログのリンクを見てもらえればわかるが、アンスティチュではなく同じユーロスペースで見ていた。アンスティチュが中心となり未公開作品を2度だけ映画館で上映する企画だったのだ。
考えてみたら、古典的な映画ならば大学の授業でよくやるので、私は10回以上見ている作品がある。外国映画だとジョン・フォードの『駅馬車』、オーソン・ウェルズの『市民ケーン』、ビリー・ワイルダーの『サンセット大通り』、ジャン=リュック・ゴダールの『勝手にしやがれ』、フランソワ・トリュフォーの『大人はわかってくれない』あたりか。
日本映画だと、吉村公三郎の『安城家の舞踏会』、小津安二郎の『晩春』、溝口健二の『雨月物語』、増村保造の『妻は告白する』、川島雄三の『幕末太陽伝』、今村昌平の『豚と軍艦』などはもはや台詞を言えるくらい、繰り返し見ている。特に邦画は見るたびに新しい発見があっておもしろい。
授業だと、学生がどんな感想を言っても「そんなシーンあったかな」と言わずにすむ。「その見方をするとこのシーンはどう解釈しますか」と切れ返すこともできる。そして「アプレ」とか「パンパン」とか「オンリーさん」といった今の学生が知らない言葉を、時代背景と共に教える。
ただし、新作は好奇心というか、いい映画はすべて押さえておきたいという、違うモチベーションで見るから、2度見ると何となく時間がもったいない気がする。しかしそれも考えてみたら妙な話だ。いい映画は2度見たらもっといいに違いない。実際に、試写で見てからもう一度映画館で見ることはよくある。
要は、初めてと思ったら2度目だったという自分のボケぶりが悔しいのだろう。目下の問題は『ジャネット』の第二部にあたる『ジャンヌ』を見に行くかどうか。それもまた見ていたらどうしようか、と心配になる。
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