« 『アクター・ジェンダー・イメージズ』に学ぶ:その(2) | トップページ | 年末に読む瀬戸内寂聴『夏の終わり』 »

2021年12月29日 (水)

年末に見る豚の映画『グンダ』

年末に何か変わった映画を見たくなって、ヴィクトル・コサコフスキー監督のドキュメンタリー『GUNDA/グンダ』を見た。豚の家族を中心に、鶏、牛の集団を追いかけたもので、全編白黒、テロップもナレーションも音楽もない。それなのに、93分間全く退屈しない。

最初に小屋から大きな母豚が顔を出す。しばらくすると、小さな生まれたばかりの子豚が次々と顔を出す。これがどんどん増えて1ダースほど。子豚たちは母豚の乳にぶら下がろうとするが、母豚はあまり気にせずにのしのしと歩く。

母豚が子豚を押しつぶすのではないか、子豚同士で食い合いが始まりやしないかと思わず不安になるが、小屋に入ったり出たり、外を歩いたりしているうちに、子豚は少しずつ大きくなる。時間がどれだけ経過したのかもわからない。

しばらくすると、鶏小屋から鶏が何匹か出てきて歩き出す。歩いたり、飛んだりしながら付近を動き回る。そのうちの一匹はなぜか一本足だけれど、ちゃんと歩いている。私は思わずここに豚の集団がやってきて食い散らしはしないかと心配するが、そんなことはない。

次に出てくるのは牛たち。これまたある時小屋から出てきてのしのしと歩き出す。なかには立派な角が生えた牛もいる。相手に尻を見せて尻尾をゆらゆらと相手の顔に近づけるのは、求愛行為か。いずれにしても牛は豚より強そうだなどと考えて、自らの闘争心というか、野蛮な考えが恥ずかしくなる。動物たちは戦わないのだ。

また豚たちが出てくる。子豚はだいぶ大きくなっている。ある時そこにトラックのような車がやってきて、いつの間にか子豚たちはいなくなる。母豚は所在なさげに歩き回る。しかしいつまでたっても子豚たちはいない。

実は撮影は凝っている。超クロース・アップをしたり、地面にカメラを置いたり、手持ちの長回しカメラで追ったり。牛の動きにはスローモーション撮影を使ったり。豚や鶏や牛は撮影に気づいているのかと思わず考えるが、いずれも人間の迷い事だ。

映画を見ていて退屈しないのは、あくまで動物の位置にカメラがあるからだと気がつく。つまり人間中心主義を脱した徹底的な動物目線の映画だから、あらゆるカットが新鮮に見える。年末のちょっとした驚きだった。

|

« 『アクター・ジェンダー・イメージズ』に学ぶ:その(2) | トップページ | 年末に読む瀬戸内寂聴『夏の終わり』 »

映画」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 『アクター・ジェンダー・イメージズ』に学ぶ:その(2) | トップページ | 年末に読む瀬戸内寂聴『夏の終わり』 »