『忠烈図』を見る
国立映画アーカイブの特集「香港映画発展史探求」を見たいと思っていたが、ようやく行った。見たのはキン・フーの『忠烈図』(1975)で、倭寇を退治する中国人の話と聞いて昔から見たいと思っていた。私は外国で作られたヘンな日本人の出てくる映画が妙に好きだから。
キン・フーの映画は1990年頃に東京で映画祭があって『山中傳奇』や『侠女』A Touch of Zenは見たが、これは見ていない。昨年作られたデジタル復元版で香港電影資料館の所蔵というから、余計に見たくなった。
題名の「忠烈図」はよくわからないが、台湾の「忠烈祠」と言えば日本と戦った中国兵士を祀る神社なので、これは明の時代に「倭寇」と戦った中国の兵士たちを指すのだろう。実際、次から次にやってくる倭寇を迎え撃つために、7人の驚異的な兵士たちが血みどろの戦いを最初から最後まで繰り広げる。
「倭寇」はもちろん台湾人が演じているから「行け!」とか「殺せ!」という日本語もおかしい。まず着ているのは柔道着風の白の上下に赤い帯だが、白がどこか薄汚れていて、カッコよくない。そのうえに多くが無精ひげでいかにも貧しくて弱そう。
一番おかしいのは倭寇のトップの「博多津」を演じるサモ・ハンで、戦国武将のような衣装を着ているが顔は白塗りで、どこか滑稽で「桃太郎」に近い。あるいは北朝鮮のキム・ジョンウン総書記か。彼が出てくるのは後半だが、映画は最初は続々と海岸にやってくる倭寇たちを退治することから始まる。おもしろいのは木に乗った男が敵の動きを横笛の音色で知らせること。
7人の中心となるのはウー参謀を演じる白鷹(バイ・イン)と徐楓(シュー・フォン)が演じる夫妻で、港にある倭寇の陣地まで乗り込む。敵は日本人と中国人の連合部隊で、中国の幅の広い剣と日本刀がぶつかり合い、2階から日本人が飛んで出てきて前後左右に飛ぶ。手裏剣も投石もあって、アクションシーンがほぼ無限のように続く。敵の陣地の道場には中国名と日本名の札が下がっていて、日本人に「室田日出夫」もあった。
ラストは博多津とウー夫妻と将軍を演じる喬宏(ロイ・チャオ)の4人が投石やナイフで同時に死んでしまってびっくり。そして字幕で「倭寇はなくならず、そのまま続きました」と出て爆笑。日本人はヘンに描かれているが、彼らと組んでいる中国人もいるし、反日などの思想性はないアクションのみ。とりわけ最後の戦いには、まさに血沸き肉躍る思いだった。
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