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2022年2月 6日 (日)

ネオレアリズモ再考:その(5)

先日、ユーネクストでの配信でマリオ・カメリーニ監督『ユリシーズ』(1954)を見た。これはカーク・ダグラスとシルヴァーナ・マンガノ主演で、アンソニー・クインも重要な役で出ている。戦前にすばらしい喜劇を作ったカメリーニの戦後の歴史大作だが、今どきこんなものがユーネクストで見られるとは。

これまたハリウッドの俳優を主要な役に据えたイタリア映画で、アンソニー・クインは同じ年のフェリーニの『道』では主演をしている。カメリーニの作品としては大味で傑作とは言い難いが、この映画の製作がディノ・ディ・ラウレンティスとカルロ・ポンティという戦後イタリアを代表する2大プロデューサーというのがポイントだろう。

彼らはよく組んでPonti-De Laurentiisの名でイタリア映画の名作を製作しているが、『道』もこの2人が並ぶ。この2人の共通点は、アメリカとの強いネットワークを持っていることと同時に、有名なイタリア女優と結婚していることだ。デ・ラウレンティスは、ジュゼッペ・デ・サンティス監督の『にがい米』(1949)を製作し、その直後に主演のシルヴァーナ・マンガノと結婚している。

カルロ・ポンティはソフィア・ローレンと結婚している。そのソフィア・ローレンと出会ったのが、ポンティが1951年に「ミス・イタリア」の審査員をやった時とWikiに書かれている。それからポンティは端役を彼女に与え、後に主演で『河の女』『ふたりの女』『昨日・今日・明日』と作る。

「ミス・イタリア」と言えば、シルヴァーナ・マンガノも1946年に「ミス・ローマ」となり、「ミス・イタリア」に応募している。その時に「ミス・イタリア」となったのがルチア・ボーゼで、同じ年にジナ・ロロブリジダも参加していた。「ミス・イタリア」に出た彼女たちに、豊かな階級出身の者はいない。何とかして食べてゆくためにミス・コンテストに出たのだろう。

当時すでに「ミス・イタリア」では水着審査があったようで、4人ともいわゆる「グラマー」。そのうち2人は後に大プロデューサーとなるデ・ラウレンティスとカルロ・ポンティと結婚している。戦後のイタリア映画はネオリアリズモで知られるが、一方でアメリカ好き、グラマー美女好きのプロデューサーが大活躍をしていた。

ちなみにシルヴァーナ・マンガノは長い間「マンガーノ」と表記されてきた。これは明らかな間違いで「マーンガノ」が一番近いが「マンガノ」もありなので、私はそう書くようにしている。これを書きだすとキリがないが、「フェリーニ」ではなく「フェッリーニ」だとか「ルキノ」ではなく「ルキーノ」だとか「ミラノ」ではなく「ミラーノ」だとか、イタリア語の表記は実は難しい。

 

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