『ウエスト・サイド・ストーリー』は私には長かった
スティーブン・スピルバーグ監督の『ウエスト・サイド・ストーリー』を劇場で見た。最近のスピルバーグは玉石混交の感じがしているが、『ペンタゴン・ペーパーズ』は好きだった。今回は予告編からして面白そうだったので、期待していた。
結果から書くと、かなり長く感じた。もともと私はミュージカルというものが好きではない。いきなり「わたしはあなたがすきー」などと歌い出すのは舞台ならいいが、どこまで行ってもリアリズムからは離れられない映画にはどこか合わないと思ってしまう。
そのうえ、1961年の『ウエスト・サイド物語』をまともに見たことがない。テレビで吹き替えを見てやめてしまったり、飛行機で半分寝ながら見たくらい。だから今回の新版と比較などはとてもできない。
一番おもしろかったのは、冒頭で舞台がリンカーン・センター建設中の場所だとわかったこと。瓦礫の端からゴロツキたちが出てきて踊りだすが、リンカーン・センターは貧民地区を整理して作った楼閣なのだと知った。完成予定図も写っていた。そこにあるメトロポリタン・オペラには一度だけ行ったことを思い出した。
同じニューヨークの場所でいえば、クロイスターズ美術館が出てきたのも懐かしかった。ここはフリッツ・コレクションと並ぶニューヨークの邸宅型美術館で、とにかく居心地がいい。ポーランド系移民のトニーがマリアとの最初のデートに連れてゆく場所で、刑務所にいたゴロツキにしては趣味が良すぎる。
それから街頭ロケで大勢で歌いまくるシーンがやはりいい。どこで撮ったのかわからないが、うまく当時のビルの感じが出ているし、アニータのダンスの迫力がとんでもない。そしてマリアの歌唱力が群を抜いている。
1961年の頃は、若者たちが道路で歌い踊りまくるシーンを日本人はカッコイイ、真似したいと思ったのではないか。今見ると、ヨーロッパ系とプエルトリコ系という移民のゴロツキたちの無茶な喧嘩と愛を、その社会的歴史的な問題は置いておいてノスタルジックに美しく歌い上げた感じ。
今は移民同士の恋愛に何の問題もないし、そもそも親が同じ地域出身だからといって一緒に行動することもないだろう。現在では貧困はどこにもあって、一方でリンカーン・センターに出入りする金持ちたちは微動だにしない。そんなことを考えながら見る私には、2時間37分は長かった。
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