アーティゾン美術館の所蔵作品展が「懐かしい」
京橋のアーティゾン美術館で「はじまりから、いま。」と題した所蔵作品展を見た。副題が「1952-2022 アーティゾン美術館の軌跡――古代美術、印象派、そして現代へ」で、コレクションのすべてを見せる内容だ。これがとにかく、懐かしい。
まずは昔からブリジストン美術館や他館の企画展で見たこの美術館の名品が懐かしい。例えばセザンヌの《サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール》(1904-06)、ピカソの《腕を組んですわるサルタンバンク》(1923)やコローの《ヴィル・ダヴレー》(1835-40)、青木繁の《海の幸》(1904)などは何度も見ているこの美術館の顔だ。
それから、1990年から91年にかけて一緒にローマやフランクフルト郊外のダームシュタットに行った、大阪の具体美術協会の面々の作品も懐かしい。白髪一雄、村上三郎、田中敦子、元永定正各氏の面々は、ローマなどで交わした言葉まで覚えている。
その追憶に耽っていたら、彼らの写真まで出てきた。1993年のベネチア・ビエンナーレの具体回顧展で安斎重男さんが撮った写真だった。そこには先ほどの名前に加えて金山明、吉原通雄、吉田稔郎、山崎つる子、白髪富士子ら各氏の姿もあった。その頃まではみんな元気だったが、今ではみんな亡くなってしまった。考えてみたら、その写真を撮った安斎さんもいない。
安斎さんの写真には1980年の若い堂本尚郎さんの姿もあった。もちろん堂本さんの作品も展示されていた。彼は2006年のポンピドゥーセンター展の時に知り合い、親しくさせてもらった。ご自宅に何度行ったことか。彼も、もういない。
この展覧会の最初には、ブリジストン美術館からアーティゾン美術館までのこれまでのすべての展覧会ポスターがあった。1950年代や60年代のポスターは活字を見るだけで、戦後感が溢れている。元気な昭和である。私が最初に行ったのは1980年代半ばだが、その頃は既に今風のポスターになっている。
そう思っていたら、「土曜講座」のリストがあった。毎週土曜の午後2時にホールで開いていた講演会だ。河北倫明、三木多聞、土方定一、富永惣一といった美術界の大御所の名前が並んでいる。あるいは岡本太郎、平山郁夫、佐藤忠良のような画家や彫刻家もいた。私は講座の存在は知っていたが、一度も行かなかった。
そう思っていたら、ビデオが流れていて映像の状態はよくなかったが、明らかに嘉門安雄さんだと声でわかった。嘉門さんはブリジストン美術館の館長で私は最初の職場の時に館長室で会っていたが、その後は東京都現代美術館の館長として、大変お世話になった。
わずか1年半の美術記者時代に取材した作品もあった。「美の履歴書」という大きな欄で小出楢重の《帽子をかぶった自画像》(1924)を細かく解説したが、何を書いたか全く思い出せない。作品よりも記憶と忘却ばかりで時間が過ぎていった。
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