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2022年3月12日 (土)

還暦になって:その(34)郷土愛

還暦になって、人生の半分以上を東京で過ごしたことに気づく。私の場合は福岡生まれで大学も地元なので、なんと24歳の時に「上京」した。これは18歳で高校を卒業してからすぐとはだいぶ違う。パリで1年過ごした後でもあり、もう東京への「憧れ」はなかった。

西武新宿線の武蔵関駅近くにアパートを借りて毎日「東京は住みづらいなあ」と思っていた。それから偶然が重なって1年後に会社員になったが、何となく「仮住まい」の気分があった。いつかは福岡に戻るものと思っていた。だから九州料理の店とか好きだったし、スーパーでも福岡産と愛媛産のみかんがあれば福岡産を買う。

今でも実家に帰ると嬉しい。電車が最寄り駅に近づくとだんだん高揚してくる。だからと言って中学や高校や大学の友人と会うわけではない。同窓会に行ってももはやほとんど話が合わないことは経験済みなので、あえて連絡は取らない。3年前に母が亡くなった今となっては、ただ実家近くの風景が限りなく愛おしい。

福岡に25年近く住んだと書いたが、今住んでいる新宿区の神楽坂に住んでこの夏で25年になる。福岡と同じだから、少しは郷土愛も生まれた。前に書いたように私は毎朝新聞で、東京都の区別のコロナ総感染者数を見ている。1月末に江戸川区が新宿区を超したと書いた。その時点で既に世田谷区と大田区が超していた。

私は新宿区民がまるでみんな歌舞伎町のような繁華街に住んでいると思われるのは心外で、人口の多いほかの区よりも少なくなればいいと毎日思っている。この一月半で練馬区、江東区、板橋区、足立区、杉並区も新宿区を超してしまった。葛飾区や品川区が超すのも時間の問題である。ようやく人口比に近づいた。

なぜ新宿区に住むかと言われると困るが、青山や麻布は困った金持ちが多いだろうし(イメージだが)、みんなが憧れる自由が丘や横浜や吉祥寺のお洒落な雰囲気にはなぜか上京した時から反発があった。ああいう「成功した人」が住むようなところは、気持ちが悪かった。それに何より、神楽坂は物価も安くおいしい店も便利なスーパーも多いので暮らしやすい。年をとってからは、老人が多くて気が休まると思う。

雑誌で神楽坂の特集があると、今でも買ってくる。新しい店があると出かけてみる。福岡出身のシェフだと必ず話しかける。次に好きなのは練馬区。「上京」して最初に住んだし、今教えている大学もある。今でも畑が広がっている場所があって、その野暮ったいが実は暮らしやすい感じが気に入っている。練馬区の後は千葉の行徳、江東区と住んだが、一度も「西」には住んでいない。

これから、福岡より神楽坂への郷土愛が益々強まるかもしれない。

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