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2022年3月17日 (木)

『ふたつの部屋、ふたりの暮らし』のインパクト

4月8日公開のフランス映画『ふたつの部屋、ふたりの暮らし』を見た。監督のフィリポ・メネガッティは1980年生まれのイタリア人で、ほとんどフランス語のこの作品が長編デビュー作という。ローマで出会って南仏で一緒に住むフランス人とドイツ人の2人の女性が、ローマへの移住を企てながら起きる事件の話だから、ずいぶん込み入っている。

ところが話自体はシンプル。フランス人のマドレーヌ(マルティーヌ・シュヴァリエ)とドイツ人のニナ(バルバラ・スコヴァ)は同じアパートメントの最上階で別々に部屋を借りているが、実際はニナはマドレーヌの部屋に同居している。マドレーヌの娘や息子が訪ねてくる時は自分の部屋に戻る。

2人はおそらく70歳前後で悠々自適の暮らし。双方のアパートメントを売って、思い出の地ローマに住むことを実現しようと考えるが、マドレーヌは子どもたちに言い出せない。ニナに責められて苦しんだ挙句に、マドレーヌは体調を壊して入院してしまう。娘は懸命に看病をして退院すると、住み込みの介護の女性を付ける。

つまりは老婆2人のレズのカミングアウトと介護という現代的なとんでもない問題が巻き起こる。しかし映画はあくまでマドレーヌを愛してやまないニナの立場から描かれる。従って彼女は介護の女性とも子供たちとも対立してゆく。ニナはもはや恐れるものはないから大胆に動き、その展開がかなり劇的で見ていてドキドキする。

それでも最後には何とかうまく収まって、実は何も解決していないけれど、ほっとする。2人がローマで聞いた曲「愛のシャリオ」のイタリア語版が映画で何度か流れ効果的に使われているが、最後の場面では歌詞までピッタリ。これは日本では誰かが日本語で歌っていたはず。

2人の女優が存在感たっぷりでいいし、娘役のレア・ドリュッケルや息子役のジェローム・ヴァレンフラン、介護の女性役のミュリエル・ベネゼラフに至るまで丁寧に演出しており、新人とは思えないほど完成度が高い。

この映画はフランスのセザール賞の新人監督賞のみならず、アカデミー賞のフランス代表にまでなったというから、今後が楽しみな監督だ。映画のクレジットの最後にイタリア語で「私の父へ」と出てきたが、ぜひイタリアでも撮って欲しい。

告知:3/19(土)11:45パゾリーニ『テオレマ』(@ヒューマントラスト有楽町)上映後トークをします。

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