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2022年3月14日 (月)

『西洋美術とレイシズム』を読む

有名なマネの《オランピア》もそうだが、西洋美術には時々黒人が描かれている。古い宗教画にも出てくるので、長年気になっていた。そこで読んだのが岡田温司著の出たばかりの新書『西洋美術とレイシズム』。オビに「人種差別の根源をキリスト教美術に探る」と書かれていた。

読んで見ると、前半は聖書の中の黒人やアジア人などの他者がどのように表現されたかを説明している。「ノアの方舟」のノアの3人息子のうち末っ子のハムは泥酔した父の裸を見てしまい、兄2人と違ってハムの子孫は「奴隷」の運命が待ち受けている話が『創世記』にある。

名高いシスティーナ礼拝堂の天井フレスコ画の「ノアの泥酔」では、ハムの肌は「やや茶褐色に焼けているように思われる。その頭髪も、金髪のヤペテの肌にたいして、濃い赤みを帯びて細かくカールしている」。これは15世紀の世界地図でハムにアフリカが割り当てられていることに由来するのではという。

『創世記』には「それぞれの地に、その言語、氏族、民族に従って住むようになった」と書かれているが、呪われたハムにはアフリカが想定された。あるいは「13世紀以降、イエスの受難の各場面で、ユダヤ人のみならず、黒人やムーア人とおぼしき人物たちが、イエスを苦しめる悪役としてかなり頻繁に登場するようになる」。これはジョットのフレスコ画にもある。

「15世紀から16世紀になると、たしかに王侯貴族の召使として、黒人の姿が絵のなかに登場するようになる」。16世紀のティツィアーノの絵があるが、「このタイプの肖像画は、これ以後18世紀のロココ様式の時代まで、ヨーロッパで盛んに描かれることになる」。マネの絵はこのあたりの意識的な引用だろう。

このあたりを岡田温司は「搾取のトロフィー」と書く。つまり、世界各地を侵略して搾取した印の一つとして、黒人の奴隷を描き込む。それは15世紀から18世紀のヨーロッパ貴族の「驚異の部屋(ヴンダーカンマー)」の発想であるが、古くは古代ローマで流行した皇帝軍による戦勝と支配を記念する「トロパエウム(勝利の碑)」の図像に基づいている」。

トロパエウムはトロフィーの語源だが、英語に「トロフィー・ワイフ」という言葉があったのを思い出した。金持ちが結婚する美女をさすが、アフリカはそんな「飾り」だったわけである。この後に「まだらの黒人」という白皮症を扱った興味深い表象もあって、ようやく第Ⅰ章が終わる。今日はここまで。

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