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2022年4月22日 (金)

吉野家常務発言に考える

吉野家常務の早大の授業での発言が話題を呼んでいる。当人は早大の講師から外され、吉野家を解任になり、ほかの会社との契約もすべてなくなったようだ。これがほぼ1日くらいで決まったから、迅速な対応だった。

「地方から出てきた右も左もわからない生娘が、初めて利用してそのままシャブ漬けになるような企画。男に高いメシを奢ってもらえるようになれば、絶対に食べない」との発言らしい。

これに対して、地方を馬鹿にしてる、「生娘」という言い方も「男にメシを奢ってもらう」という表現も男女差別、吉野家ファンをバカにしている、といったコメントがあった。それぞれもっともだが、私は別のことを考えた。

まずこれは大学の社会人講座向けということ。政治家の演説や会見での発言ミスのような公の場ではなく、大学という閉ざされた場で、かつ社会人相手である。本来なら外に出ないが、SNSの時代だと何でも外に出る。常務を弁護する気はないが、10年前ならこんな大きな事件にならなかった。

たぶん学生向けなら、こんな発言はしない。1回1万円近い費用を払って(あるいは会社に払ってもらって)参加した社会人たちに対してのリップサービスに違いない。たぶんこの常務は社内ではこんな発言はザラで、社会人向けということで同じような気分になったのだろう。社内の発言は守秘義務があるので、普通は外に出ない。

私は最初この発言を聞いた時、70歳前後の人が話したのかと思った。「生娘」や「シャブ漬け」というのは、「昭和」の時代、ヤクザやパンチパーマのあんちゃんが街にいっぱいいた時代の言葉だからである。私でも使ったことのない語彙だ。ところが外資系出身の49歳だったのに驚いた。

私が13年前に大学に移った頃は、会社内のセクハラ、パワハラ的発言はまだまだ大らかに許されていた。私も特に酔うとそういう発言をした自覚もある。大学に来て、「学生に言ってはいけない」言葉が多いのに驚いた。会社では「もうお前、明日から来なくていいよ」と新人に言ったことはあるが、学生に「来なくていいよ」とは絶対に言えない。

それでも最初の頃はかなり危ない発言があったと思う。さすがに経験を積み、世の中の変化もあって、最近はない(はず)。それでも吉野家常務発言の事件は少しヒヤリとした。それからこの講座にはコーディネーターの早大教授がいて、彼を選んでいる。私も2年に1度、映画のプロデューサーなど映画業界人を毎週呼んできて講義をしてもらう講座のコーディネーターをしているので、その意味でも心がざわついた。

 

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