河瀨発言から、ロシアとプーチンについて考える
少し前になるが、河瀨直美監督が東大の入学式で「ロシアを悪者にすることは簡単」と述べたことが一部で批判を浴びていた。私は特に彼女の映画のファンではないけれど、言っていることは真っ当だと思った。「プーチンは悪魔」的な考えはあまりにも単純だから。
なぜプーチンはあのような行動を取るのか、ロシア人の多くがなぜ支持するのか、どうしたら解決するのかを考えないことには、思考停止になってしまう。その意味で、先週金曜の「毎日」夕刊(飯田橋駅でゲット!)に左右1頁ずつで載っていたロシア文学者の亀山郁夫さんと元外交官の東郷和彦さんのインタビューは興味深かった。
亀山「ロシアの人々は基本的に政治、つまり世俗的権力に無関心です。というより、むしろ神と大地に忠実なのです」「ドストエフスキーは、絶対的な君主制のもとで、自分たちはどこよりも精神的な自由を享受できるといった独自のロシア人観を披露しました。ロシア人の魂の核心に潜む謎の正体とは、マゾヒズムです」
「根本は、プーチン大統領のおごりと、ヒロイズムと、過ぎたる使命感にあります。ロシア人の受動的なメンタリティーがそれに利用されたのです」。このあたり、日本にも共通するところがあるのではないか。
東郷「強いリーダーを求めるのがロシア国民であり、アングロサクソンの作り上げた民主主義の制度とは相いれない」。このあたりは亀山さんと重なる。プーチンは2000年に通称「ミレニアム論文」を出し、ソ連崩壊で三等国になってしまったロシアを「強くて豊かで多様な価値を持つ」国に戻すことを述べたという。
「継承国のロシアは、ワルシャワ条約機構がなくなった以上はこれに対抗すべく作られたNATOも解体されると期待したわけです。しかしながら『欧州で尊敬される大国』どころか、旧東欧諸国などは『ロシアは信用ならないから自分たちも入れてくれ』と言い出した」「NATOが08年にウクライナとジョージアの加盟を原則OKとしたため、プーチン氏の我慢のレッドラインを越えてしまった」
14年に親露派のヤヌコヴィッチ大統領が追放された「マイダン革命を背後からサポートし、その後も軍事支援を主導したのが、ほかならぬバイデン氏(当時は副大統領)なのです」「クリミア奪還をバイデン氏の後ろ盾なしにゼレンスキー氏が発言するとは考えにくい。2人が1年かけて挑発し、あらゆるオプションをロシアから奪い去ったと見えたはずです」
そして元外交官らしい現実的な解決策として、日本は「ウクライナ支援だけではなく、ゼレンスキー氏と米国に対して意見すべきだ」「プーチン氏を第三次世界大戦の瀬戸際まで追い詰めていいのか、と」「プーチン氏が『ロシアは戦争に負けなかった』と思えるところまで降りて、共存の道を探るべきではないか、と」。これはある意味で正しいのかもしれない。
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