『死刑にいたる病』に震える
5月6日公開の白石和彌監督『死刑にいたる病』を試写で見た。129分、最初から最後まで見る者を鷲づかみにするような映画だった。実を言うと、真ん中あたりまでは「これはありえないだろう」と思っていたのだが、予期せぬ展開が続いて最後に「そういうことか」と頷いた。
冒頭、不気味な阿部サダヲが出てくる。妙な服でお洒落なのか何なのかわからない。「彼のやり方には規則があった」なとどナレーションが流れる。それから地方都市の葬儀が出てくる。実家に帰った大学生の雅也(岡田健史)は居心地が悪そうだ。中山美穂演じる母はおろおろ。そこに彼宛の手紙が届く。それは榛村大和からだった。彼は榛村のやっていたパン屋のあった場所に行く。
榛村大和(阿部サダヲ)はパン屋「ロシェル」を営んでいた。感じがよく、常連客にはサービスをしてくれるので、人気のパン屋だった。とりわけ高校生の男女はよく通っていた。しかし実は彼はその店に通う高校生たちと時間をかけて仲良くなった末に、殺して埋めていた。殺人容疑は24件、うち9件が立件・起訴。
そのうちの1人を殺す場面があまりにも残酷で、実は見たくなくなったくらい。しかし映画はむしろ彼がどのようにしてまじめで素直なタイプの高校生の信頼を得てゆくかを見せる。この手口のうまさに唸る。
雅也は榛村からの手紙に応じて、刑務所に会いに行く。9件の起訴のうち1件は自分はやっておらず冤罪なので調べて欲しいと頼まれて、雅也は言われるがままに動き出す。弁護士事務所で資料を見て事務所の名刺を作って話を聞きに行くと、確かにおかしい。
そのうち、母の秘密にもたどり着く。さらに高校の同級生の女の子と大学で再会し、仲良くなる。そして冤罪の真犯人が現れるが、なかなかたどり着けない。何かどこかおかしいなと思いながら見ていたら、最後の最後に種明かしがあって、ゾッと背筋が寒くなった。
おもしろかったが、リアルな話と思い込んで真剣に見ていたら実は作り込まれたフィクションでしたという感じで、ちょっと狐につままれたよう。それほど白石和彌監督の演出は不気味で、特に阿部サダヲと岡田健史と中山美穂は見ていて怖くなる。
阿部サダヲと岡田健史は何度も刑務所で会うが、その場面が抜群。何もないシンプルなシーンのはずなのに、2人の間のガラスに相手の顔が写ったり、2人の後ろに殺された高校生の映像が出てきたりと凝りに凝っている。中山美穂は複雑な過去を抱えて生きる感じがピッタリ。この初夏一番の話題作だろう。
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