« 「イタリア式喜劇」をめぐって:その(2) | トップページ | 今見るべき映画『親愛なる同志たちへ』 »

2022年4月18日 (月)

還暦になって:その(37)何でも寄贈する

去年の7月に女優のフランソワーズ・アルヌールさんが亡くなったが、彼女からは昔、秘蔵の写真を8点もらっていた。1961年の東京出発前のパリのオルセー空港でのシモーヌ・シニョレと秦早穂子、『用心棒』撮影中の黒澤明監督と三船敏郎、東京の料亭でのイヴ・モンタン、カリフォルニアでのジェラール・フィリップとジャン・ルノワールなどと彼女が一緒に写った写真の白黒紙焼きだった。

明らかにプロの写真だが権利もわからないので(多くはユニフランスの同行カメラマンだろう)時々眺めるだけだったが、彼女の死を聞いて日本の国立映画アーカイヴに寄贈することにした。このままある日私がどこかで急に死んだ時には、ゴミの1つとして捨てられるだろうから。

その前に一部をフェイスブックに載せたらフランスからも「見たことがない」と大きな反応があった。確かに彼女が黒澤明や三船敏郎と歓談している写真はなかなかレアな感じがする。国立映画アーカイブに寄贈する際に岡田秀則さんに、1996年のジャン・ルノワール映画祭で来日した時の写真(岡田さんも写っている)はどうかと聞いてみた。するとそれも「当館で開催した映画祭関連なので欲しい」とのことだった。

大半は私がバカチョンカメラ(もはや使用禁止用語)で撮ったカラーの紙焼き56枚だったが、探したらネガも出てきた。そこでネガを寄贈することにした。ついでになぜか手元にあったハワード・ホークス映画祭のスチール数点も。そうすると岡島館長名で丁寧な礼状が来た。何の役に立つのかはわからないが、死蔵するよりはいい。

前にここで書いたように、この1月に映画評論家・監督の樋口尚文さんからのお誘いでシェア型書店「猫の本棚」で昔作った映画祭のカタログを売り始めた。その機会に自宅の売れ残りカタログを整理したら、タンスの奥からどんどん出てきた。そこで国立映画アーカイブにあるかネットで蔵書を調べがほとんどあった。

欠けていた「イタリア映画祭2003」は岡田さんに相談して寄贈することにした。ついでに国会図書館と自分の大学の図書館を調べたら、ほとんどない。そこでそれぞれ欠けたものを寄贈することにした。ついでに学生企画の映画祭パンフも。国会図書館はネットに公表されている宛先に勝手に送ったら、しばらくして受領書が来た。先ほどネットで所蔵を見ると、もう登録されていて行けば誰でも見られる。

一番嬉しいのは、少しだけ家の中にスペースができたこと。それから、自分が関わった映画祭のカタログやパンフを将来誰か見たいと思ったら、国立映画アーカイブか国会図書館に行けばいい、というのは想像すると楽しい。実際にいるかわからないが。還暦になって、自分のことばかり考えてきた私にも少しは公共の精神が生まれたのか、あるいはこれまた相変わらずの自己顕示欲か。

 

 

|

« 「イタリア式喜劇」をめぐって:その(2) | トップページ | 今見るべき映画『親愛なる同志たちへ』 »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 「イタリア式喜劇」をめぐって:その(2) | トップページ | 今見るべき映画『親愛なる同志たちへ』 »