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2022年5月27日 (金)

『私のはなし 部落のはなし』の意味

満若勇咲監督のドキュメンタリー『私のはなし 部落のはなし』を劇場で見た。3時間25分という長さに躊躇したが、とにかく被差別部落問題については何も知らないので見たかった。この問題を扱った纐纈あや監督の『ある精肉店のはなし』(2013)がかなりおもしろかったこともあった。

ドキュメンタリーとして見たら、『ある精肉店のはなし』の方が上かもしれない。しかし被差別部落問題にその歴史も含めて正面から取り組んだこの映画の意味は大きいだろう。これまでこういう映画はなかったのでは。

私はこの問題に関して何も学ばなかった。福岡の片田舎には近くにそういう地区がなかったのか、いわゆる「同和教育」のようなものも受けたことがなく、「人権センター」の類もない。小学校の運動会で地区別対抗リレーを「部落対抗リレー」と呼んでいたような場所だった。今まで知り合いから「その出身だ」と言われた経験もない。

そんな無知の私にもこの映画はわかりやすい。なぜなら、「部落」出身の人々が20代から高齢者まで顔と実名と地名を出して語っているからだ。主に三重県のある地区と京都駅近くの地区(ここは私でも知っていた『パッチギ!』のロケ地付近)の出身者が中心だが、彼らがこれまでに受けた差別や今後のことについて語る。

結婚する予定なのに突然断られた男性の話や結婚する時に相手に告げて受け入れてもらった女性の話など、結婚にまつわるものが多い。一人だけその近くに住みながら「絶対にあの人たちとは親戚になりたくない」という女性が出てくる。名前も顔も出さず「知り合いにその地区の人達がいるからまずい」。むしろこちらが悪人に見える。

みんが「私のはなし」として部落のことを話すが、後半には監督の「わたしのはなし」も出てくる。実はこの監督は学生時代の2007年に『にくのひと』という映画を作って高い評価を得たが、部落解放同盟の反対で映画館での公開はできなかったという。見た後でユーロスペースの北條支配人に聞いたら『私のはなし 部落のはなし』には「部落解放同盟」は反対はしていないが、積極的に応援もしていない」らしい。

映画で私が一番おもしろかったのは、京都駅近くの地区に住む高齢者の山内さんが18歳の時に撮ったドキュメンタリーが挿み込まれたシーン。8ミリで撮って相当に痛んでいたが、東京現像所で何とか修復してもらう場面も出てくる。このドキュメンタリーは本当に電気も来ない貧しい地区の雰囲気がよく出ていた。映画は全体に魅力的な登場人物が少なかったので、この山内さんにもっとフォーカスを当てたらよかったのでは。

これまた終盤に、いわゆる「鳥取ループ」事件でかつての『全国部落調査』を復刊しようとした宮部氏が出てくるので期待したが、こちらは友好的に終わってあまりおもしろくなかった。彼の主張は聞いてもしょうがない感じはしたが。

この映画はどの新聞にも映画評は出ていない。「朝日」や「毎日」は社会面や都内版で紹介はしているが。これは映画評でも取り上げて欲しかったが、部落解放同盟からの抗議が怖かったのだろうか。いずれにしても、平日の昼間にしては年配の客でかなりの入りだった。

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