久しぶりに現美に行く:もう1回だけ
現美では建築家の「吉阪隆正展」と特撮美術監督の「井上泰幸展」のほかに、無料で「TCAA2020-2022受賞記念展」が開かれていた。これは国内の中堅アーチストへの賞らしいが、TCAAとはTokyo Contemporary Art Awardと英語のみの表記で相変わらず現美はダサい。
これまでもこの受賞記念賞は記憶にあるが、受賞者がピンと来なかったのでたぶん見ていない。今回の藤井光と山城知佳子の2氏は何度か作品を見たことがあったので、建築展と特撮展のついでに見た。これが3階全部を使った立派な個展2つで、なかなか見応えがあった。
藤井光は『ASAHIZA』というドキュメンタリーも見たし、あいちトリエンナーレの日本占領下の台湾の映像を使ったインスタレーションもおもしろかった。今回は戦後に米軍に「戦争画」と指定されて米国に移送される前の「戦争画展」を再現している。入口にはパネルがあって「日本の戦争画展」/1946年8月21日‐9月2日/東京都美術館/入場 占領軍関係者に限る/主催 アメリカ合衆国太平洋陸軍」と書かれ、その英文もある。
展示されてるのは絵ではなく、絵のサイズのべニア板だけ。時には赤や黒などの布張りもある。そこに「藤田嗣治《アッツ島玉砕》」というようなキャプションがある。あるいはそれらの板が並ぶ収蔵庫。そして戦争画の扱いをめぐる当時のアメリカ人の会話が流れる。
絵がないという発想はよくわからないし、会話もどんな立場のアメリカ人かもわからない。ただ、絵のないべニア板が並ぶ殺風景な空間に得意げなアメリカ人の声が流れるとおどろおどろしい。藤井光の作品にはこれまでもこうした構造のおもしろさだけで勝負するが多かった。
山城知佳子の映像作品はそれに比べると具体的だ。基地をめぐる話があったり、オペラを歌う人がいたり、肉を料理する人がいたり、海の中が写ったり。沖縄の人々と自然と記憶と歴史があらゆる方向に交錯し、入り混じる。こちらも何を言いたいのかはわからないが、リアルな生の感触が伝わる分、好きだ。
常設展は1階が「光みつる庭」で3階が「刻むことから」というテーマ展示。1階では最初の中西夏之の部屋にうっとりしたし、3階では舟越桂の彫刻数点に少年の心になり、クリスチャン・ボルタンスキーや宮島達男のインスタレーションの磁力に浸った。昔と違って戦後美術史を系統的に見せておらず、自由に現代美術を並べている感じは快かった。無料の小冊子も美しい。
これらすべて6月19日まで。ところで現美の展示室は企画展が3つ、常設展が2つだが、企画展を2つにしてもう1つ常設展を増やしたらどうだろうか。戦後の日本美術をたどる教科書的なもので無料にしたらどうかと、TCAA展を見て思った。
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