チャン・イーモウ監督『ワン・セカンド』の面白さ
チャン・イーモウ監督『ワン・セカンド 永遠の24フレーム』を劇場で見た。中国の第五世代のこの監督の映画をきちんと見ていたのは2000年頃までで、最近はあまり見ていない。今回見ようと思ったのは、文化大革命の時代の巡回上映がテーマになっていると読んだから。
時代は1960年代後半、強制労働所にいる男が、娘がニュース映画に写っていたという手紙をもらって、脱走して映画を見に行くというもの。そこに、両親がおらず弟のためにランプの傘用にフィルムを盗む少女がからむ。さらに映写技師の息子をめぐるエピソードも加わる。
要は親子の愛を幾層にも描いているが、それ自体はちょっと強引な展開のような気がした。中国当局から検閲で再編集をしたというから、そのせいかもしれない。そんなことよりもこの映画でおもしろいのは、巡回上映の劇場の描写だ。
映画技師の息子の粗相でフィルム巻からはみ出して泥にまみれたフィルムの束を、まるで神に祀るように、みんなで高く上げて舞台に運ぶ。スクリーンの後ろで洗浄作業が始まるが、使うのは庭で蒸籠で作った蒸留水。張り巡らされたフィルムに水を含んだ布で丁寧に拭いてゆく何十人もの女たち。その姿が客席からはスクリーンに影のように写る。
映画の始まる前には、待ちきれない観客たちは犬や自転車を高く掲げてスクリーンに写す。あるいは手で動物の形をして写す。映画が始まると千人を超す劇場は超満員で、舞台の上の左右にも数十人が立ち、2階や3階の窓にも何人もしがみついて見ている。舞台のスクリーンの反対側にまで何十人も見ていた。スクリーンを見るということの喜びをこれほど見せた映画はなかった。
上映される「英雄子女」は1964年の映画でかなり雨が降っている。ニュース映画は少女にいったん盗まれたせいもあって、劇映画の後での上映となったが、洗浄しても相当に痛んでいた。自分の14歳の娘が1秒だけ写っているのを見た男は、映写技師にもう一度見せてくれと頼み込む。
観客が帰ると、技師はその部分だけを切ってループ状にして上映する仕組みを器用に作り、何回でも見せる。さらに映写技師は、そのシーンのフィルムから1カットだけ刻んで男に渡す。それがラストを盛り上げる。
スクリーンにものが写る現象にあれほど盛り上がり、プロパガンダ映画が上映されると最後にはみんなが声を出して歌う。映画のたった1秒を泣きながら何度も見る男がいる。いやあ、泣けてしまった。
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