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2022年6月 5日 (日)

関西の新しい美術館:その(1)大阪中之島美術館

学会で関西に行く機会があり、新しくできた美術館を訪ねてみた。かつて展覧会屋だった私は、新しい美術館というとどうしても見たくなる。ましてや「大阪中之島美術館」としてこの2月にオープンした美術館は、長年、「大阪市立近代美術館建設準備室」として豊かなコレクションを誇っていた。

1980年代に構想が持ち上がり、コレクションの購入が始まった。普通なら90年代の半ばには美術館が建つはずだが、それが大阪市長の交代などもあって、なかなかできなかった。その間も所蔵作品を購入していたので、膨大なコレクションができあがった。90年代からごく最近まで展覧会には「大阪市立近代美術館建設準備室蔵」の作品が展示されていることが多かった。

私も90年代半ばの「ルネ・マグリット展」で『レディ・メイドの花束』という大作を借りたことがあった。だから私は6000点というコレクションを見たかったが、最初のコレクション展は既に終り、「モディリアーニ展」と「みんなのまち 大阪の肖像(1)」という2つの企画展のみ。

建物は大きい。中之島の地下が中心の国立国際美術館の横にあった阪大医学部跡地に、黒い四角な建物がドンとある。入口は2階で、長くて狭くて(例の追い越せないタイプ)遅いエレベーターが4階まで続いている。モディリアーニ展はさらに上の5階だった。

展示室は広く、天井は高い。そこに約100点の作品がゆったりと並べられている。残念なのはモディリアーニの作品がその1/3くらいしかないことで、よくある「〇〇とその時代展」であること。そのうえ多くは国内作品で既視感が強い。藤田嗣治を始めとして、エコール・ド・パリの国内所蔵作品をたくさん見てもなあと思う。

それでも後半にモディリアーニの肖像画と裸体画が20点ほど並ぶのは圧巻だ。あの不思議なメランコリーをたたえた長い顔の絵をまとめて見ると、この画家の精神構造が見えてくる。彼がブランクーシや藤田嗣治などと関係があったこともこの展覧会で知った。特に彼の肖像画の緊張感はブランクーシの彫刻と比べると、よくわかる。

この美術館所蔵の《髪をほどいた横たわる裸婦》と同じモデルを描いた《座る裸婦》(共に1917年)が、ベルギーのアントワープ王立美術館から出品されていたのはよかった。同じモデルでもポーズが違う2点を見ると、ピカソの絵のように見えてきた。

「みんなのまち 大阪の肖像(1)」展は主に1920年代から40年代前半までの大阪のモダニズムを見せるもので、ポスターなども多い。こちらも所蔵作品展ではなく、関西の美術館からの出品も半分近くある。しかし戦前のモダニズムの展覧会は東京でもたくさん見ているので新鮮味はない。

4階はせめて所蔵作品を時代順に見せたらいいのにと思った。今年できた美術館が、これまでと同じマスコミ共催(今回は2つとも読売)の企画展中心とはちょっと寂しい。それからあの敷地面積で5階の割には展示面積が少ないのももったいない。30年以上美術館の構想を練って、練り過ぎたか。

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