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2022年6月30日 (木)

映画『東京2020オリンピック』A、Bについてもう一度考える

『東京2020オリンピック SIDE:A』は200館で公開したにもかかわらず、初日から3日間の金土日で1万2千人ほどしか入らなかったという。「朝日」の小原篤記者はどこかに1回平均5人になると書いていた。これは日本の映画興行史上記録的な不入りかもしれない。

さて『SIDE:B』はどうだったのだろうか。私は『A』も『B』もTOHOシネマズで見たが、『A』は300席強、『B』は約70席のスクリーンだった。配給は東宝で「お国」の公式映画なのでスクリーン数は同じでも回数を絞って小さな席数にしたのではないか。

もちろん観客の少ない理由は映画の中身以外にいくつもあるが、もし普通に見てわかりやすく感動できる内容だったら、もう少し入ったのは間違いない。『A』はいくつかの競技や選手に絞って、その活躍を感動的に見せることは簡単だったはず。『B』はバッハ会長や森氏をある程度悪者にして、オリンピックとは何かを正面から問いただす内容だったらどうだろうか。

そういう映画だったら見た人が素直に感動して口コミで広がるだろうし、2度見る人も出ただろう。では誰が監督したらよかっただろうか。これは難しいが、例えば原田真人監督ならば、オーソドックスに『A』を作るだろう。そもそも『A』と『B』の2部制にする必要があったのか。慣れた監督なら1本でできただろう。

しかし、原田監督は河瀨直美監督に比べると国際的な知名度はない。現在、海外でも有名なのは是枝裕和、黒沢清、濱口雄介、深田晃司の各氏あたりだが、まずやりそうにない。このなかで一番普通に盛り上げてくれそうなのは是枝監督だが、彼は作るとしたら基本がオリンピック批判になるだろう。

仮にいったん受けても話し合いの時点で降りるに違いない。そういえば、水泳の池江璃花子選手を撮った5分超のドキュメンタリーがあった。化粧品会社の依頼によるものだが、これはなかなか感動的だった。これは1人の選手と何度も話し合いながら作ったからできたので、何百人という選手が入り乱れるオリンピックとは違う。

黒沢監督は全く想像ができない。およそ彼の作るフィクションとは相いれない気がする。濱口監督は東北大震災のドキュメンタリー『なみのおと』『なみのこえ』『うたうひと』を作っているが、これは2、3人の日常をじっくり追ったもの。ほかにもドキュメンタリーだと想田和弘、小森はるか、ヤン・ヨンヒ各氏の名が浮かぶが、みんなオリンピックとは遠い感じ。

河瀨直美監督は国際的に有名で、女性だし、映画の根本に日本の伝統的なものの擁護がある。さらに言えば、彼女の映画には権力批判はない。やはり彼女しかいなかったのかもしれない。

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