還暦になって:その40(おしまい)『80歳の壁』を読む
新聞広告で何となく気になって、先日書店に行った時についでに買ってしまったのが、和田秀樹著の新書『80歳の壁』。オビに「食べたいものを食べていい。お酒も飲んでいい」「健康診断は受けないほうがいい」「血圧、血糖値、コレステロール値は下げなくていい」などと書かれていて嬉しくなった。
これらは新聞広告にもあったのだが、考えてみたら80歳やその手前の人たちへのアドバイスであった。60歳を過ぎた私とは本来関係のないはずだが、「食べたいものは食べていい。お酒も飲んでいい」と書いてあると自分もそう言われたい。
それでも読んでみるとなかなかタメになる知識を得ることができた。「健康寿命」とは心身ともに自立していられる年齢のことで、平均すると男性は72歳、女性は75歳。「平均寿命」はその10歳くらい上だが、とりあえず1人で何でもできるのは普通はその年齢。
著者は80歳以上を「幸齢者」と呼ぶ。著者は高齢者専門の病院に勤めており、毎年100人ほどの遺体を解剖している。すると本人は自覚していないのに体に大きな病巣があることが多い。ガンがその典型で、85歳を過ぎるとほとんどの体にガンが見つかる。「ガンは死に至る病で、早期発見・早期治療をすべき」とされるが、「本人が気づかないガンもあるし、生活に支障のないガンもある」
ここから導かれる選択は「80歳を過ぎたら我慢をしない、と言う生き方です」。「好きなことをして気楽に生きる生活のほうが、免疫力が高まる」。認知症も同じで「85歳を過ぎた人のほぼ全員の脳に異変が生まれたのです。アルツハイマー型の脳の変性のような病変です/つまり認知症は病気というより「老化現象」に近い」
病院に行かないと死者数が減るという実例が2つある。2020年はコロナ禍で病院に行く人が大幅に減った。すると日本人の死亡者数が減ったという。もう1つは財政破綻で唯一の市立総合病院が2007年に閉じた夕張市。しかしその後も死亡者数はほとんど変わらない。ガン、心臓病、肺炎は減って、老衰が増えた。つまり病院ではなく家庭や老人ホームで死ぬ人が増えた。
私は病院でなく、自宅で死ねたらどんなにいいかと思う。そのために必要なことは「「医療難民」になる前に、ドクターショッピングをして、自分の考えを受け入れてくれるかかりつけ医を探すしかない」。たぶんこれがこの本の結論に近い。少なくとも還暦の私にとっては。
私の近所のかかりつけ医は2人いるが、1人は嫌韓、嫌中の発言がいやで行かなくなったし、もう1人は若い頃フランスに留学した医師で気が合うが、もう80歳近いからあと何年続けるのかわからない。これから自分に合う医者を探して「ドクターショッピング」をしようかな。
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