オンラインのイタリア映画祭
今年のイタリア映画祭はリアルでもGWに開催されたが、その後多くがオンラインでも上映された(=第1部)。さらに今は「第2部」で、過去のイタリア映画祭で上映された作品を8月7日まで見られると知って覗いてみた。私がこの映画祭に関わったのは、最初の2001年から2007年まで。
さすがにその頃のはないだろうと思っていたが、何と自分が上映したマルコ・ベロッキオ監督の『乳母』(1999)やマッテオ・ガローネ監督の『剥製師』(2002)などがリストにあって懐かしかった。
さて今回見たのは、レオナルド・ディ・コスタンツォ監督の『日常のはざま』L'intervallo(2012)。2013年のイタリア映画祭で上映された作品で、当時から評判がよかったが見ていない。ドキュメンタリーを撮っていた監督の第一回長編劇映画というのも気になった。
冒頭、暑い日差しの朝、父親とかき氷の屋台を準備する少年の無口な姿から、いい感じが出ている。彼は街のゴロツキに屋台と携帯を奪われ、自分の言うとおりにしろと命じられる。与えられた仕事は、若い女が逃げないように見張りをする番だった。
彼らが一日を過ごすのは、使われていない廃屋のような建物で何階もあり、大きな庭まである。1階には巨大な調理室があるところを見ると、ホテルだったのかもしれない。最初は互いに敵意をむき出しにしていたが、本当に少しずつ歩み寄る。2人の会話から、それぞれの境遇がわかって来る。
少年はサルヴァトーレ、17歳で将来シェフになるのを夢見ている。母親はおらず、鳥の動きを見て「雨が降るよ」と言い当てる。少女は15歳でヴェロニカ、ベルナルディーノというボスを裏切って別の男とくっついたのを責められているようだ。部屋の中には電気はないので薄暗いが、あちこちで外からの光が入り、彼らの顔を輝かせる。
2人は生まれたばかりの子羊たちに乳をやる羊を見たり、庭でボートに乗ったりして次第に近づいてゆく。屋上からは夜のナポリが見える。時おり上空を通る飛行機の音。ベルナルディーノがやってきて少女はナイフをかざすが、無駄な抵抗だった。少年は屋台と携帯を返してもらい、わずかな金をもらって屋台を引いて家に帰る。そこにはもう1つの屋台を引いて来た父がいる。
少年と少女の偶然の出会いとたった一日の探検を、言葉少なく映像で見せてゆく。その背景にはナポリを支配するカモッラの姿が立ちはだかる。長編第一作とは思えないほどの力作で、終わりのクレジットで撮影にベテランのルカ・ビガッツィの名前を見つけて納得。後で調べたら建物は19世紀に建てられた精神病院で何十年も使われていないという。あの建物を見つけたことで映画は半分成功している。
| 固定リンク
「映画」カテゴリの記事
- 『旅と日々』の不思議な感覚(2025.11.15)
- 東京国際映画祭はよくなったのか:その(6)(2025.11.11)
- 東京国際映画祭はよくなったのか:その(5)(2025.11.07)


コメント