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2022年7月 5日 (火)

シャネル展を見る

三菱一号館美術館で9月25日まで開催の「ガブリエル・シャネル展」を見た。ユニクロばかり着ている私はこういう高級ブランドには関心はないが、元展覧会屋(ランカイ屋)としてはファッションをどう見せるかには興味がある。

昔、「オードリー・ヘップバーン展」というのを全国の百貨店で開催したことがあった。フィレンツェのフェラガモ本店の地下にあるフェラガモ博物館が開催したものを、企画会社経由で日本に持ってくるというよくあるパターンだった。ヘップバーンがフェラガモの靴を愛用したことが縁だが、むしろジヴァンシーのドレスが目玉だった。

中身はすべてフェラガモ博物館の監修だが、会場は日本側で探す。日本橋三越を起点に全国12の百貨店で開催した。この百貨店選びが大変だった。なぜならフェラガモ・ジャパンが各百貨店との関係でいろいろ「アドバイス」をくれるから。日本橋三越は当然三越系列で巡回したいが、それは「ジャパン」は避けたい。

結局関西は心斎橋、神戸、京都の3つを提案した大丸になったし、ほかは各地の一番店、つまり名古屋なら松坂屋本店、金沢なら大和本店という具合に決まった。おおむね巡回地が決まったところで、フェラガモ博物館の館長とヘップバーンの息子が来日して私と会場を見て回った。

それからが実は大変で、博物館側は各会場の図面をもとに、詳細な展示プランを送ってくる。それは外部の展示デザイナーに依頼したものだが、スカラ座のオペラの美術を担当している高名な人だった。日本ではその図面通りの展示ケースを作る必要がある。しかしそのお金を払うのは各百貨店なので、できるだけお金のかからない方法で仕上げる。当然そこで揉める。

こうしたブランドのファッション展は、結局のところ、直営店舗と同じような感覚で仕上げることが必要とされる。つまり実際よりも限りなく美しく見せる工夫である。昔話が長くなったが、今回の展覧会は「パトリモワヌ・シャネル」(つまりはシャネル財団)とガリエラ宮パリ市立モード美術館の監修なので、彼らのプランをそのままに実現したような日本離れした展示だった。

シャネルは活動的な新しい女性向けのファッションを作り出したと言われるが、展示はすべて完璧なケースに入れられて黒を基調にした薄暗い空間にピン照明が当たっている。博物館入りした感じの美の展示で、華やかだがあまり心が弾まなかった。ましてやジュエリーは私には全くわからない。

驚いたのは日本の京都服飾文化財団や神戸ファッション美術館の所蔵作品があったこと。なぜか歴史的なファッションの所蔵は関西に集中している。主にゴーモン社の興味深い記録映像があったが、説明クレジットがフランス語のみなのは残念。

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