仙厓を楽しむ
永青文庫という小さな美術館が私の家の近所にある。肥後細川家のコレクションを集めたもので、数年前に春画展をやって話題になった。春画展は大半がほかから借りてきた作品だったが、普段はテーマを決めて所蔵作品を見せている。
今は「仙厓ワールド」として江戸後期の禅僧、仙厓義梵の書画を7月18日まで開催していると散歩中にポスターで知り、少しだけ暑さが和らいだ午後にTシャツ、半ズボン、サンダルで行ってみた。歩いて20分ほど。
行くと入口に「《龍虎図》の展示は終わりました」と書かれていた。何のことかと思ったら、この展覧会は前期と後期に分かれていて、前期は終わっていたようだ。紙ものなので、大半の作品は前期か後期のどちらかの展示。まあ仙厓は出光美術館でもたっぷり見たからいいやと思って千円のチケットを買った。
展示された作品群は、そんないいかげんな私にぴったりのおおらかな画風だった。まずその経歴を見て改めて驚く。仙厓は1750年に美濃の農家で生まれてあちこちで僧の修業をする。39歳で福岡にやってきて、40歳で聖福寺の住職となる。絵を描き始めたのは40代後半で、62歳で寺を弟子に譲り、本格的に描き始める。そして88歳で亡くなるまで描き続ける。
キャプションには「70代後半」とか描いた時期が書いてあっておもしろい。どれもスイスイと一筆書きで描いた感じだが、さすがにほとんどが60歳を過ぎて描いたものなので、なんでもありな感じだ。
《竹林七賢人》(70代前半)といっても何だか褌姿の七人の子供たちが、竹林の中でキャッキャッと騒いでいる感じ。どこにも「賢人」らしさがない。《寒山拾得図》(50代~60代)に至っては、片方が巨大な盃を持ってニコニコし、もう片方が上から瓢箪に入れた酒をどんどん注いでいる。要は酒飲み2人組だが、顔は子供のよう。
一番びっくりしたのは《野雪隠図》(80代)。後ろを向いてしゃがんでお尻を出し、草の上にうんこのような太い線がサラっと描かれている。野雪隠とは野糞のことで、こんなものを描くとは。それも何だか大らかな感じで「人ハこんそふな」という賛文が描かれている。「人間はこんなもの」という意味だろうか。
その路線だと《ぼうぷら図》(87歳)もすごい。長ナスと玉ねぎが描かれているが、どうみても男性器にしか見えない。それも元気に「立って」いる。ぼうぷらとは毎日ぶらぶらしている意味のようだが、なぜ大きくなったのか。いやはや87歳で何を考えたのだろうか。こんなにおもしろいなら前期も見ればよかった。
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