『みんなのヴァカンス』の描く夏休み
「夏休み」というのは、子供の頃から何とも言えない楽しいイメージがある。最近、その感覚を味わっていないなと思っていたら、ギヨーム・ブラック監督のフランス映画『みんなのヴァカンス』を劇場で見て、久々に思い出した。
黒人のフェリックスは、あるパーティで知り合ったアルマと恋に落ちた。アルマは翌朝、南仏の両親の別荘に出かけるが、フェリックスはそこに行こうと思いつく。同じ黒人の友人でスーパーに勤めるシェリフを誘って出かけることに。
どうやって行くのかと思うと「相乗り」アプリで女性2人の名前で登録すると、エドゥアールという帰省する青年が引っかかる。最初はエドゥアールは怒るが、3人の珍道中が始まる。3人とも金がなく、いかにも女性にももてない感じ。
アルマの住む小さな街がいい。みんなあちこちの川で泳ぎ、自転車で移動しテントを張って暮らしている。いかにも田舎の夏で、自分にもこんな感じがあったなあと思い出す。そこでエドゥアールの車は故障し、修理に1週間かかる。
フェリックスはアルマの家を突然訪れるが相手にされない。シェリフは赤ちゃん連れの美人ママと次第に仲良くなる。アルマとその姉が友人の男性たちとカヌー乗りに行くと聞いて、エドゥアールはフェリックスと無理に合流する。
真ん中あたりから話がどう転がるか、全く予測がつかない。出て来る人物はみんなちょっと間が抜けていて、行き当たりばったり。最後の最後まであれよ、あれよという感じで驚きの連続だった。これは抜群に楽しい。
同じダメ人間を描いても、『セイント・フランシス』はジェンダー意識や政治的な正しさを計算しつくしていたが、こちらはあえて登場人物たちの勢いに任せる感じ。それでいて、金持ちと貧乏人の違いや黒人への差別などもやんわりと出ているからすばらしい。
これまでのこの監督の『やさしい人』や『7月の物語』などは、もっとブラック・ユーモアが効いていた。今回は国立高等演劇学校の学生を使ったせいか、全体に優しく自然にできあがっている。映画はこんなに単純でもいいのだと思う。夏の終りにまさにピッタリの映画。
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