銀座シックスの名和晃平の展示を見ながら
10月20日までの展示というので、銀座シックスの吹き抜けの名和晃平の大きな展示を見に行った。松坂屋が銀座シックスになってからなぜか行かなくなったが、久しぶりに行った。1階に入ると高級店ばかりで吹き抜けがないのに戸惑ったが、それは2階に上がると始まっていた。
名和晃平はだいぶ前に木場の現美で個展を見て、天才だと思った記憶がある。最近その作品を見ていないので、見たいと思った。今回の展示は前に四国の芸術祭で犬島で見たものの発展形だと書かれているので楽しみだった。
エスカレーターで2階に行くと、中央の吹き抜けにかなりの大きな雲のような白い物体が浮いている。雲のようだが、5階あたりの上の方などどこか宗教的で寺院のような感じも出ているし真ん中には動物のようなものがいる。ところがそれが全く目立たない。
周囲のキンキラキンのエスカレーターやブティックの放つ輝きの渦の中で、白い作品群は注意しないと気がつかないくらい見えない。客を見ていても、誰一人として見ていないし、写真を撮る者ももちろんいない。全体で平面が20m×20m、高さは10mはありそうな作品が、まるでちょっと変わったシャンデリアくらいにしか見えない。
これでは作品にかわいそうだと思う。百貨店という強烈な商業空間にはとても勝てないのだと思った。それに吹き抜けで遠くからしか見られないのも大きい。同じパブリック・アートでも、六本木ヒルズの入口広場にあるルイーズ・ブルジョアの巨大な蜘蛛の彫刻や近くのミッドタウンの入口にある安田侃の黒い彫刻はもっと馴染んでいる感じがする。
一般客がそれをアートと思うかは別にして、とにかく「何かヘンなものがある」と思ったり、触りたくなったりしたら、ある程度パブリック・アートの役割は果たせていると思う。通常ないはずのものの出現に「違和感」を感じさせるのがアートの出発点だから。もちろん美術館の展示とは違うが、遥かに多くの人々に見せられるのは作った作家としても悪くないだろう。
それに比べると銀座シックスの名和晃平の展示は、その存在が認知されない空間にあると思った。今や商業施設の空間デザインには相当のお金がかけられているので、名和晃平ほどの強い個性の作品でも霞んでしまう。
それでも、名和晃平にもこれをアレンジした画廊かコーディネーターにもかなりのお金が入るだろうから、美術界全体としてはいいのかもしれないが。六本木ヒルズもミッドタウンもパブリック・アートのコーディネーターは知り合いだが、銀座シックスは誰だろうか。
私自身は美術界から足を洗って10年以上たつのに、まだアートのことを考えているのに驚く。20代半ばの最初の職場でいきなり美術の仕事を始めたのが大きかったのだろうか。
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