大阪市美のコレクションを見る
私は最近美術館の所蔵コレクションに興味がある。あるいは過去の展覧会の再現を見るのが好きだ。六本木のサントリー美術館で「美をつくし 大阪市立美術館コレクション」が11月13日(日)まで開催されているので行ってみた。東京国際映画祭と東京フィルメックスで映画獣になってしまった私には、美術展は別の感性を刺激するので心地よい。
大阪市立美術館は1936年に作られたが、1926年にできた東京府美術館(後の東京都美術館)と1932年の京都市美術館に次ぐ3つ目の公立美術館。これらは主に、日展などの団体展や公募展のほか新聞社主催の大型展に使われている。だからある意味で美術館の最もよくない形だが、歴史が古いとコレクションは多い。
京都市美術館は数年前に京都市京セラ美術館となった時に改装で展示面積を増やし、常設展スペースや学芸員企画の渋い展覧会もやるようになった。私の印象だと、大阪市立美術館は従来型の「貸館」でそのコレクションはほとんど展示していない気がする。ところが所蔵品は8500点もあるという。
今回のサントリー美術館でのコレクション展でわかったのは、その核となるのが何人かの個人コレクターの寄贈によるものだということ。今回の展覧会では冒頭に仏像などの仏教美術が並ぶが、その多くは弁護士で政治家の田万清臣氏とその夫人明子氏による「田万コレクション」。なかには飛鳥時代の《菩薩立像》のような重要文化財もある。
さらに京都の寺の旧蔵品もあった。美術館は古いというだけで、寄贈によって作品が溜まってゆくのだ。中世や近世の屏風絵にも田万コレクションが数点あった。狩野宗秀の《四季花鳥図屏風》(重要文化財)はかなり見ごたえがある。 このセクションでは「小西家伝来・尾形光琳関係資料」というのもおもしろい。これは光琳の息子が養子先に渡したものが寄贈されたとのことで、図案集など家族にしか残っていないものが多数あった。
中国美術は東洋紡の社長を務めた阿部房次郎氏による「阿部コレクション」の書画があり、さらに関西の実業家・山口謙四郎氏による「山口コレクション」の石造彫刻がある。ブリヂストンやポーラのように美術館は作るまではいかない場合、寄贈するのだろう。
さらに工芸には1912年に来日したスイス人実業家U.A.カザール氏の「カザール・コレクション」です。近世後期から明治期にかけての漆工品や印籠・根付など約4000件にのぼり、実は同館収蔵品の半数という。アメリカに送るはずが第二次世界大戦で留め置かれ、戦後に遺族から寄贈されたと書かれていた。
20世紀半ばまでの日本の実業家は美術品を集め、美術館を作ったりコレクションを寄贈したりした。その頃より日本は豊かになったはずだが、そういう金持ちは平成以降は見当たらない。そんなことを考えた。
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