電通の闇をめぐって:その(1)
東京オリンピックをめぐる元電通専務の汚職の捜査が一段落したようだ。KADOKAWAなど全部で5ルートがあったというが、私はこの「ルート」という言葉に、かつてのロッキード事件を思い出した。あれはアメリカのロッキード社が飛行機を売るために、「全日空ルート」や「丸紅ルート」などいくつものルートを使って賄賂を贈っていた。
これは旅客機を日本に売るためという目的があって一社が賄賂をばらまいたもので、わかりやすい。ところが五輪汚職は数社がそれぞれオリンピックのスポンサーになるために、元電通専務で東京オリンピック理事だった高橋被告1人にお金を出したというもの。
普通に考えるとスポンサーになれるかどうかを決めるのは組織委員会のはずだから、高橋被告への賄賂は意味がない。ところが元電通専務以外にはスポーツのスポンサー関係に詳しいものがおらず、彼が思うままに実権を振るったようだ。
その金額は総額で2億円。私はここで「アレレ」と思った。通常の広告の取引だと、広告会社は15%の手数料を取る。本来は広告を作って載せる媒体を提供する手間賃だったが、いまでは広告制作費は別となり広告の場所の「斡旋」だけで15%を取る。
組織委員会ではそれを12%にした。高橋被告には別途数%(たぶん3%前後)が複数の友人の会社を通じて支払われていた。高橋被告の場合は、「スポンサー当確」にしてあげる謝礼である。スポンサーから見たら全体で15%なら通常の広告と変わらない。しかし多くの税金を使うみなし公務員である組織委員会の理事としては、別途もらうのはまずい。
それにしても、そもそも電通や博報堂が広告の「斡旋」だけで15%をもらうのは多過ぎる。私は新聞社に15年以上勤めていたのでわかるが、新聞の広告担当者は例えば「外国のブランド」が担当だと、毎日ルイ・ヴィトンやグッチの宣伝部に日参している。そして広告が出そうだとわかると広告会社に連絡して一緒に動く。
これだけなら広告会社はいらないが、例えば新聞の広告が少ない日にも電通や博報堂に頼めば何とか埋めてくれる。広告主の側では、「〇日に出せばこんなに安く出せますよ」と電通が持ってきてくれる。あるいは新聞とテレビとネットのセットで提案してくれる。広告主がいちいち新聞などと交渉しなくても済む。
そんなこんなで15%の通例ができた。その世界を知らないオリンピックの組織委員会からしたら「高すぎる」となって12%となったのだろうが、オリンピックに関してはそれでも高い気がする。もちろんスポンサー探しという業務があり、今回電通はそれを1800億円までは保証するというミニマル・ギャランティ(MG)を切って、「専属代理店」になったわけではあるが。
それにしてもこの15%の悪習を絶つのは新聞やテレビなどの大手メディアの側しかない。彼らが一致して交渉したら下がるのではないか。汐留にさんさんと光り輝く電通の高層ビルを思い出しながらそう思う。
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