摩訶不思議な『グリーン・ナイト』
『ロード・オブ・ザ・リング』のような、西洋の中世を舞台にした冒険映画にはあまり興味がない。予告編でそんな感じが一杯の『グリーン・ナイト』を劇場に見に行ったのは、監督が『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』のデヴィッド・ロウリーだから。
この監督は何を言いたいのかよくわからないが、妙に凝った映像を見せて見る者を異様に高揚させるところがある。今回もそれは貫かれていて、中世のアーサー王伝説に登場する騎士の話ながら、実際はホラーかSFのようで前後の脈絡がない。
アーサー王のクリスマスの宴会に緑色で全身をまとった騎士が現れる。自分の首をはねたら斧を挙げるが一年後に会いに来い、と言う。そこになぜか手を挙げるのが王の甥の青年ガヴェル(デブ・パテル)で、緑の騎士の首を切る。おかしいのはその騎士は自分の頭を持って去ってゆくこと。それから一年、ガヴェインは恋人とグダグダ遊んでいたが、クリスマスが近づくと旅に出る。
そこで出会うのは若き盗賊だったり、裸の巨人だったり、言葉を話す狐だったり、親切な城主とガヴェインを誘惑するその妻だったり。とてもたどり着くようには思えないが、クリスマスの日にはなぜかうまく緑の騎士と対峙する。ここで対決が始まるかと思ったら、ガヴェインは逃げ出す。帰りはなぜか簡単でいつの間にか家に帰り、アーサー王の後を継いで結婚する。かと思ったらもう1回どんでん返しがある。
いつも情けない表情のガヴェインがいい。そもそも何を考えているのか、最後までわからない。心理というものが全く描かれない。けれども何が起きても驚かず、素直に立ち向かう。そのくせ女には弱く、すぐに誘惑に乗ってしまう。まるで現代劇かむしろ夢の世界に近い。
盗賊に襲われると一瞬自分の白骨が出てくる。それを見て発奮して立ち向かうのだから、映画は主人公の無意識を追いかけているのかもしれない。よくこんなわけのわからない企画が通ったものかと思うが、ハリウッドのメジャー作品ではなく、話題作を連発しているA24の製作だった。
これはもう一度見たら、ストーリーにこだわらず摩訶不思議な映像を楽しめるかもしれない。
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コメント
昨今、A 24映画のクオリティダウンは激しく、こレモその範疇に入るかと。
来春早々後悔の、Everything Everywhere All at Once なんて、タイムトラベル物贔屓の私でも「クソ映画」扱いしかできない、惨憺たる出来の映画です...
投稿: onscreen | 2022年12月 4日 (日) 08時28分