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2022年11月16日 (水)

『すずめの戸締まり』にがっかり

新海誠監督の『すずめの戸締まり』にがっかりした。全体に退屈というか、頭でっかちで平板で終盤に急に東北大震災を持ってくる安易さに、ちょっと驚いた。『君の名は。』や『天気の子』に比べても、かなりドラマが弱いと思った。

そもそも宮崎の高校生、鈴芽(すずめ)が普通過ぎで乗れなかった。さらに大学生の草太と出会って「カッコいい」と思うシーンがピンと来ない。まさかこれが恋愛に発展するとはとても思えない。草太は全国各地の廃墟の扉に鍵をかける「閉じ師」だったという設定は文学的でちょっと惹かれるが、いきなり出てくる猫のダイジンの嫉妬によって三本足の椅子に変えられるという展開がついていけない。

涼芽は椅子になった草太を連れてダイジンを追いかけながら、宮崎からフェリーで愛媛に行き、バスで神戸に行く。そしてさらに東京に行く。たまたま宮崎で出会った廃墟を探す大学生の草太をなぜそこまでして追いかけなければならないのか。恋愛のためなのか、廃墟の戸を閉じないと「ミミズ」の竜巻が大地震を起こすからなのか。

両親のいない鈴芽を育ててくれた叔母の存在もよくわからない。2人のクールすぎる関係は、終盤にその理由のようなものが明かされるにしても、鈴芽が彼女の忠告を無視して東京まで行ってしまい、一緒に東北まで行くのはどういう関係なのか。そこに絡む草太の友人は何なのか。

『すずめの戸締まり』という題名で、実は主人公は鈴芽で「戸締まり」とは廃墟にある扉に鍵をかけることと冒頭でわかった時、私は文学的だなと思った。日本の伝統に乗りながら、近代的な廃墟と結び付けるうまさに、大江健三郎から村上春樹を経て川村元気に至る間に俗化していった文学的な感性を感じた。

東宝のシネコンでは入場者全員に「新海誠本」という20頁オールカラーの小冊子を配っている。ずいぶん大盤振る舞いだが、見た後にそれを読むと『天気の子』という題名も、今回の『すずめの戸締まり』も川村元気プロデューサーの発案になるものと書かれていた。やはり。

もちろん温泉街や遊園地の廃墟は美しいし、その水のきらめきの中に立つ扉もカッコいい。ただ普通の人には見えない「ミミズ」はよくわからなかった。私は『君の名は。』の展開には少し疑問が残ったので、『天気の子』の水没する東京の方が好きだった。どちらにしてもその2作に比べて今回はだいぶ失望した。

私より20歳ほど若い新海誠の成熟と、還暦を過ぎた私の老化が合わなくなってきたのかもしれない。平日の16:10の回を見たら「TOHOシネマズ・デー」だったこともあり、周りは高校生と中学生が大半だったので、落ち着かなかったこともある。

 

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