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2022年12月15日 (木)

映画を見過ぎると:その(3)

学生企画の映画祭を始めてから今年で12年目だが、例年、ほぼ全作品を1度は会場で見ていた。何度目であれ、スクリーンで映画を見ることは良いこと、正しいことという思いがあったからではないか。スクリーンから放たれる光の渦を浴びることで、より映画に近づく気がしたのかもしれない。これは「宗教」のようなものだ。

今回、全14本のうち5本しか見なかった。それでも多いと言えば多いが、1日に1本だけ見ると本当に感動する。なかでもジッロ・ポンテコルヴォ監督の『アルジェの戦い』(1966)は35年ぶりくらいスクリーンで見たが、最近パソコン画面で見たのとは全く別物で本当に心を動かされた。

『高地戦』(2011)は11年前の公開時に見て実におもしろかったが、今回見てほとんど忘れていたのにショックを受けた。最後の30分、朝鮮戦争の停戦前に12時間あることがわかり、再び韓国軍と人民軍の間で激しい戦闘が繰り広げられたことが全く記憶から飛んでいた。

私は大学に移ってからも、年に200本前後をスクリーンで見ていた。今年はそれがたぶん120本くらい。教え始めてからたぶん最低の本数だが、理由はいくつもある。1つはベネチアなど海外の映画祭に行っていないこと。海外の映画祭だとすることがないので、1日に3本は映画を見る。するとそれだけで30本になる。

2020年からか、東京国際映画祭と東京フィルメックスが同時開催になったのも大きい。それだけで10本は減る。今年は少し時期がずれたので、フィルメックスも3本見たが。それにしても今年の東京国際映画祭は、かろうじてすべてのコンペを見るのが精一杯。見たい映画はあったが、気分が乗らなかった。

それから、マスコミ試写に行っていない。試写はもちろん無料で見られるが、最近はオンライン試写が増えて試写室での上映回数が減った。すると事前申し込み制になり、申し込んでも私のようにどこに書くかもわからない者は断られることがある。そうするとやはり気分が悪く、その会社の試写には行かなくなる。

試写に行かず評判のいい映画を劇場で見ると、「はずれ」の確立は下がる。なにより気分がいい。60歳を超して、いつでも1200円のシニア料金になったのも嬉しい。

本を書いていて多くの旧作のDVDを見ていたのも大きいが、執筆が一応終わっても、もはやそんなに見ない。これからは65歳までは年に100本、それ以降は50本あたりでいいのかもしれない。大量に映画を見ることは絶対的に正しいという「宗教」からようやく逃れつつある。『高地戦』のように、あまりに見過ぎて一番大事なシーンまで忘れてはしかたがない。

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