『アンニー可愛や』に泣く
急に時間ができたので、国立映画アーカイブで開催中の「アカデミー・フィルム・アーカイブ 映画コレクション」に行くことにして、2時間前に予約したのが『アンニー可愛や』。33歳のメアリー・ピックフォードがたぶん10代半ばの娘を演じている。
実は前半はちょっと退屈した。メアリー・ピックフォード演じるアニー(当時の表記は「アンニー」)はどう控えめに見ても20歳半ばにしか見えないのに、10代半ばの不良少年達と大騒ぎをしながら遊んでいる。とにかく物を投げ合うのでかなり危ないが、全体はコメディー・タッチ。
喧嘩をした少年たちが親と一緒に集まると、アイルランド系のアニーに加えて中国系、ギリシャ系、ユダヤ系、アフリカ系と移民ばかり。それでも何とか話し合う。アニーの父は警察官で周囲から尊敬される存在だった。兄のティムはギャングの一員でジョ―と仲良かったが、アニーはジョーに惹かれていた。
ある時ジョ―がダンスパーティのチケットを売りまくっているのを知って「君のお父さんのように真面目な運転手になれ」と諭す。ダンスパーティの日は父の誕生日だった。アニーは手作りのネクタイをやケーキを用意して待つ。一方、ジョーはギャング仲間のトニーの女とダンスをしたことから喧嘩になり、大騒ぎの最中にトニーは発砲した。
ところが弾は騒ぎを聞いて駆けつけたアニーの父に当たってしまう。家で父を待つアニーがノックで戸を開けると、父の同僚による悲しい知らせだった。トニーはティムに父を撃ったのはジョ―だと信じ込ませ、ティムはジョ―に銃を向けた。
一方でアニーの不良少年の仲間のうち、中国人が自宅の洗濯物屋に来たトニーの話やギリシャ人がトニーが恋人にギリシャ語で話した内容から、犯人はトニーと踏んでわかる。彼らはトニーを捕まえて警察に突き出した。そこに現れたのはジョ―を撃ったと自首するティム。ジョーはアニーの輸血で助かる。数か月後、ティムは父を継いで警察官に、ジョーは運転手になっていた。
こんな筋だが、中盤のパーティでの発砲あたりから父の同僚がアニーに「お父さんは帰ってこない」と告げるあたりから、だんだん泣けてくる。ジョ―に輸血するアニーが遺書を書くあたりやジョ―が病院で蘇るシーンなどで泣いてしまった。
それから、多民族の構成にも驚いた。1925年の時点でこうしたシナリオがあったのは、製作と原案を担当して主演したメアリー・ピックフォードの意識の高さだろう。しかし警官の子は警官に、運転手の子は運転手にという人生観は、保守的ではある。監督は彼女が選んだウィリアム・ボーディン。
サイレント映画だが音楽付きで復元されたDCPの上映で実に鮮明な画質。最初はいささか音楽がうるさかったが、最後はそれもあって泣いたのだろう。
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