本を売る:その(2)
前に吉祥寺の古本屋Yから「本を売りませんか」という手紙を受け取ったことはここに書いた。一度電話してその後連絡がなかったが、正月明けにふと時間ができた。そこで売る予定の本が並ぶ本棚の写真を3カット撮って、「こんな本を売りたい」とその古本屋にメールで送った。
メールの返事はすぐに来た。それから電話をすると「700冊ほどあるようだが、全部売るのですか」と聞かれたので、「いや、とりあえず100冊くらいの予定です」。「取りに行く時は500冊くらいあるといいですねえ」と言われたが、とりあえず来てもらうことになった。
前日の夕方から1カ所に本を集め始めた。展覧会カタログが中心で、そこに哲学書を加えた。電話で「ベストセラーはダメです」とか「哲学書は得意です」とか言われたので。基本的に自分が少しでも関わった展覧会のカタログや知り合いの学芸員からもらったカタログや友人からもらった写真集などは外した。
結局、「マティス展」とか「セザンヌ展」とか「長谷川等伯展」とか個展は外して、「シカゴ美術館展」とか「印象派展」などを集めた。外国のカタログもビジュアルが中心のものは売れるとのことで20冊ほど。ミシェル・フーコーやロラン・バルトなど出版社から出ている哲学書は30冊ほど。
約束通り午後3時半ごろ古本屋さんがやってきた。私は直前まで出したり入れたりしていたが、最終的には210冊ほどを並べた。店主はジャケットを着た紳士風で、若い女性の助手もいた。店主は一冊、一冊手に取って、大きさごとに並べてゆく。たまに奥付や出版社名などを見ているが、多くは手に取るだけで横に並べた。
ソフィア・ローレンの英語の料理本があったが、「こういうのは意外と売れるんですよ」と笑っていた。私は一冊、一冊値段をつけるのかと思ったが、そうではなかった。並べ終わるといきなり「全部で5万円でどうでしょうか?」と言われた。私は思わず「えっ、そんなに。もちろん結構です」と答えた。
助手が現金を取り出し、領収書を出すので書き込んだ。それから助手と二人でビニールの紐で10冊ずつほど器用に本を縛ってゆく。その時は雑談もした。「だいたい「〇〇美術館展」などはだめですねえ。「印象派展」とかぼんやりした題名もいけません」「「皇室の美術」などは売れません」「グエルチーノ展などは珍しくていいですねえ」「1万円で売る本を2千円で買うという感じです。こういう手間とかスペースを考えると」
縛った本を玄関に並べて、台車で2回往復してワゴン車に乗せた。お金をもらってから30分もかからなかった。帰り際に「今度は大学にも行きますので、ぜひまたうちに声をかけてください」と言われた。5万円が安いのか高いのかわからない。でもその店主の印象は極めてよかったので、また頼もうと考えている。
| 固定リンク
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- 飛行機のトラブル(2026.09.07)
- 美術と映画をめぐって(2026.08.26)
- 本を売る(2026.08.20)
- 人生の僥倖(2026.08.09)
- いつの間にかイタリア映画の専門家に(2026.08.07)
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 岩下志麻『同志として妻として』を読む(2026.08.24)
- うんざりしながら読む新書:その(1)(2026.08.01)
- 『実録!東映三角マーク宣伝部』を読む(2026.07.13)
- 『映画監督 崔洋一 映画は闘争だ!』を読む:続き(2026.07.03)
- 辻仁成からレーモン・オリヴィエへ(2026.06.17)


コメント