「恵比寿映像祭」に思う
東京都写真美術館(=都写美)を中心に2月19日まで開催の「恵比寿映像祭」を見た。近くの約束までに時間があったので40分ほど見ただけだが、感想を書いておく。このイベントは毎年行われていて、今年で15回目と言うから驚きだ。
もともと始まったのは、文化庁の「メディア芸術祭」(=メ芸)が毎年この美術館で開催されていたのが、新たにできた国立新美術館に移ったから。無料ということもあって年に一番の入場者数を集めていたイベントがなくなったので、都写美は東京都に予算要求して新たに映像祭を作った。
メ芸が公募を軸にしたコンテスト方式だったのに対して、こちらは学芸員が作品を選ぶ美術館方式だから、同じ映像を中心とした展示でもだいぶ違った。メ芸ではアニメや漫画も含めて毎年の世界の代表作を見ることができてわかりやすかったが、こちらはコンセプチュアルでよくわからないことが多かった。毎年難しい副題がついていて、今年は「テクノロジー?」。
さて作品を見たが、やはりピンと来ない。3階は今年から始まった「コミッション・プロジェクト」で、5人の「有識者」が4人の作家を選んで新作を作らせたという。これがすべて私には魅力が感じられなかった。4人の1人である大木裕之氏などは過去にもっといい作品があったが。
もちろん私は1作品あたり2、3分しか見ない。ベネチア・ビエンナーレでも同じ感じで映像作品を見るが、それでもいい作品はすぐにわかる。2階はたぶん学芸員が選んだもので、こちらが少しいいがその程度。地下の展示は写真作品が多かったが、過去の作品も加えたこともあって、一番見ごたえがあった。
北代省三が東京の各地をヘリコプターで空撮した1950年代の写真は、現代のものかと思ったくらいモダンだった。その真向いの築地仁の80年代の正方形の写真もシャープだ。フィオナ・タンが数十個の大きな風船で空を飛ぶ映像はおかしいし、ドイツの女性写真家、エンネ・ビエマンが1920年代から30年代に家族を撮った写真はもっと見たいと思う。
そんなこんなで40分ほど見ただけだが、あまり印象には残らなかった。入場無料で来場者には60頁からなる立派なカタログまでプレゼントされる。5、6年ほど前に文章を書くために聞いた時は東京都からこの展覧会だけに毎年1億円近く補助金が出るとのことだったが、都民としてはどうかと思う。
もとイベント屋の私は無料のイベントが嫌いだ。お客さまにお金を払ってもらわないと、ロクなイベントにならない。ましてパンフを無料で配るなんて。そういえば、メ芸も25回目の今年で終了したが、こちらもそろそろどうだろうか。
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