本を売る:その(6)
フランス語の本を80冊ほど売ったのは、結果としては失敗だった。文庫もアルトー全集もタダ同然とはわかっていたし、美術展カタログ10冊ほどに6,000円がついたのに不満があるわけではない。単に宅配便に頼んだのが間違いだった。
前回200冊ほど売った時は、ある程度高く売れると予想された本が50冊ほどはあったので、スマホ写真でそれを見た古本屋さんがすぐに来てくれた。こうなるとこちらの費用はかからないうえに、箱に詰めたり宅配便を呼んだりする手間もかからない。軽トラックでやってきて、現金を置いてあっという間に持って帰ってくれる。
だから次回、4年後に大学の研究室を追い出される時には、大学と自宅の両方に来てもらうことにする予定。同じ日にトラックを回してもらうことだってできるかもしれない。大学で500冊、自宅で200冊ということだろうか。
自宅から本が減ると、床にびっしりと置いていた本や雑誌、小冊子類も整理する気になった。「あの本を売ったのだから」と考えたら雑誌などを売るのに気がラクになった。そんな中で驚いたのはパリの情報誌「Parisscope」の山。これはかつての東京の「ぴあ」のようなもので、毎週水曜日に出る。
私はパリに行くと、必ずPariscopeを買った。仕事でたった2泊しかしなくても、どんな映画をやっているか見るために買った。そしてそれを日本に持ち帰って保存していた。3カ月など長期滞在の際は、一番最後の号を持ち帰った。それが手元に30冊ほどある。つまり30回ほどパリに行ったことになる。
一番最初の号は、1984年3月で最初に2週間パリに行った時。表紙はフランチェスコ・ロージ監督の『カルメン』。中を見るとあちこちにボールペンで線が引いてある。モンパルナスで夜10時過ぎまで見たタルコフスキーの『鏡』とか、フランス人にチケットを買ってもらったパリ郊外の「太陽劇団」の『リチャード2世』とか。
次に古いのは1985年の7月号で、表紙はロバート・アルドリッチ監督の『ジェーンに何が起こったか』のリバイバル上映。この映画はその時に見た記憶がある。1年間パリで過ごして去りがたかったので、この表紙はくっきりと覚えている。帰国前に一番最後に見たのはゴダールの『軽蔑』で、仲の良かったドイツ人の女の子と見た。
3番目は1986年の10月。フランスの国立映画学校の入試に落ちて帰国した。表紙は娯楽喜劇映画で記憶にない。こんなものは1円にもならないが、1980年年代の数冊だけは保存することにした。表紙をめくると前号の部数が書いてあって、15万部前後。この雑誌は私が2016年夏にパリで半年過ごした直後に、部数が2万部を切って廃刊になった。やはり情報はスマホでということだろうか。
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