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2023年2月18日 (土)

イタリア映画史を書く:その(1)

昨日、私の新刊『永遠の映画大国 イタリア名画120年史』が集英社新書で出た。なんで唐突にイタリア映画史なのかと思われる人も多いだろうけど、これにはいろいろ経緯がある。

2020年5月に新潮社新書で出した『美術展の不都合な真実』は、編集者Kさんに乗せられて書いた本だった。私が朝日新聞デジタル「論座」に書いた美術展の裏話をKさんは「これは当たる」と踏んで、いきなり手紙が来た。結果はKさんの読み通り、3刷となって台湾でも翻訳が出た。

この本は美術業界でも話題になり、展覧会の内覧会に行くと話を向けられた。そのうえ、少し印税も入った。今まで本を書くと資料代が嵩んで損ばかりしたが、この本は体験談が中心で費用がかからず儲かった。調子に乗った私は「また新書を書きたい」と考えた。私が一番に考えたのは「国際映画祭とは何か」で、出版企画書を作って新潮新書のKさんに送ったが、会議で即却下となった。

そこで私は「イタリア映画史」はどうかと聞いたが、こちらは会議にもかけてもらえなかった。なぜイタリア映画史かと言えば、単純にイタリアは昔からたくさんの名作を作っているがその映画史の本がないことと、がんばれば自分には書けそうな気がしたから。それから2本の企画書を大手出版社数社の「新書編集長様」宛に送ったのは、2021年の1~4月頃ではなかったか。毎月1社ずつ送った。

日本人が書いたイタリア映画史の本は1冊しかない。1953年の飯島正著『イタリア映画史』で、なんと70年前。そのほか、1976年にキネマ旬報社の「世界の映画作家」のシリーズで『イギリス映画史/イタリア映画史』が出ており、吉村信次郎氏が書いている。最近では2008年にジャン・ピエロ・ブルネッタの分厚い翻訳『イタリア映画史入門』が出たが、これは内容も価格も専門書に近い。

日本、フランス、アメリカの映画史については新書を始めとして何通りも出ている。授業で教えていても、イタリアも一冊は欲しいなと思っていた。集英社新書の若い編集者Yさんから連絡があったのは、2021年の5月だったと思う。彼によれば、編集長が手紙を持ってウロウロしていると思ったら、Yさんの机の上で『美術展の不都合な真実』を見つけて、「この筆者の次の本やらない?」と言ったらしい。

さっそくYさん(25歳!)と大学で打ち合わせたが、まずは企画書の出し直しと序文の執筆を頼まれた。「永遠の映画大国イタリア」という題名はその時に私が提案し、最終的に編集部で出版のGOサインが出た。ところがその時点では目次と序文以外は全く書いていなかった。

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