『零落』に唖然
竹中直人監督の『零落』を劇場で見た。竹中直人でこの題名だとかなりエグイ感じがして、見たいと思った。俳優として有名な竹中だが、監督作品は『無能の人』(1991)に始まってこれで10本目。いつも「わざと外す」感覚の演出が持ち味だが、今回はそれが過ぎて見ていて唖然とした。
漫画家の深沢(斎藤工)が8年間の連載を終えたところから映画は始まる。かつては大ヒットしていたが、売れ行きはどんどん落ちていた。出版社はお祝いの席を設けるが、全く盛り上がらない。次回作のアイデアも出てこないので、担当編集者にも相手にされなくなってくる。
妻は編集者で売れっ子の女性漫画家の担当で大忙し。深沢は妻に当たり散らし、自分の編集者をいじめる。そしてラブホテルに風俗嬢を呼び、ちふゆという名の21歳の女性に溺れてゆく。
深沢は徹底して嫌なやつに描かれている。かつての栄光を忘れられないよくいる中年男で、「イタイ」を通り越してカリカチュアのようだ。妻との喧嘩から離婚に至る過程もいかにもだし、編集者に至ってはふざけているのかと思わせるくらい典型的過ぎて完全な作りもの。
そして「猫のような目」をしたちふゆへの幻想もいかにも文学的で底が浅い。そのうえ、ホテルの部屋にフランシス・ベーコン風の奇妙な人物像の絵がいくつもあり、流れる水や海の波を撮ったショットが挿み込まれる。その文学性に久しぶりに途中で出ようかと思った。
ちょっとおもしろくなるのは、故郷に帰るというちふゆについてゆくあたり。ちふゆの両親などと会ったらおもしろいぞと思ったが、その展開もなく、恋愛が生まれそうだが結局「幻想」で終わってしまった。
そして数年後、深沢の復活が描かれる。ここはそれなりにおもしろいけれど、やはり全体としては薄っぺらい。ポイントはこれを「わざと外し」で作っているところのはずだが、わざとなのか本気なのかわからない感じになってしまった。
たぶん竹中直人でなかったら、これは作らせてもらえなかったのではないか。あるいは途中でプロデューサーが軌道修正をしたのではないか。私には、2時間8分がとにかく長かった。
あえて評価するなら、過去の栄光を忘れらないダメ男をリアルに描いた点で、「あるある」感は十分だし、何となく自分のことも考えてしまった。
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