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2023年3月11日 (土)

「エブエブ」に退屈する

『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(何とも長くて恥ずかしいカタカナ題名!)を劇場で見た。監督はダニエルズ(ダニエル・クワンとダニエル・シャイナートのコンビ)という。これが私には、『フェイブルマンズ』よりもさらに退屈だった。

『フェイブルマンズ』の2時間31分も長かったが、こちらの2時間20分はもっと長い。「マルチバース」と言うけれど、要は過去の世界か憧れた世界を行き来するだけで、何だかゲームかミュージックビデオを見ているような感じ(どちらもよく知らないが)。

冒頭は自宅の1階でコインランドリーを営むエヴリンとその家族。父の誕生日の準備をしながら税金の申告書類を準備しているが、夫は頼りにならず父は病院に連れて行かねばならず、娘はレズで白人女性が好き。国税局に行くと女性監査官に「カラオケの代金は経費にならない」と指摘され、夕方までに書類の作り直しを命じられる。

そこで夫はイヤホンをつけてスイッチを入れたら別の宇宙に行けるとアドバイス。確かにやってみたら、エブリンは少女時代に戻ったり、歌手になったり、監査官や警備員をクンフーでやっつけたり、楽しい限り。

結局のところどこの世界に行っても、出てくるのは家族愛。さえない夫がハンサムなスターだったり、レズの娘が大活躍をしたり、病気がちの父親が一家を引っ張ったり、主人公のエヴリンはとにかくみんなの力をかりて頑張って道を開こうとする。本人はクンフーのスターだったり、人気歌手だったりして華やかな世界も訪れる。

少女時代は明らかに中国の風景が出てくるから、移民ということなのだろう。出てくるのも中心になるのは中国人で半分は中国語。彼らの苦難の歴史をソフトに見せているが、大半のアメリカ人にとっては何の関係もないだろう。これがアカデミー賞の10部門11ノミネートとは。

最近のアカデミー賞では韓国の『パラサイト』や日本の『ドライブ・マイ・カー』が賞を取って話題になったので、今度は中国ということか。終りのクレジットで中国人はすべて横に漢字が書かれている。これもまたエキゾチックなサービス。そのうえ、この映画はマルチバース=何でもありなので、中国らしさを感じるよりも、次々に出てくる変わった映像を楽しんでいればいいのか。

それにしても主演女優賞ノミネートのミシェル・ヨーは私でも知っているくらいハリウッド映画に出ているし、夫役のキー・ホイ・クァンは助演男優賞ノミネートだが、かつては子役で数々のハリウッド映画で活躍したようだ。そんな彼らへの最初で最後のお礼かもしれない。それにしてもこの映画に比べたら、『フェイブルマンズ』は十分に映画だった。同じ退屈でも意味が違う。こちらは映画とは異なる21世紀の映像か。

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コメント

私もこの映画は「クソ映画」扱いです。

全米公開時も評判悪かったはずが、なぜに賞レースでのミニー多数?!
映画賞はもはやロビー活動に支配されてしまったということでしょうか...

投稿: onscrenn | 2023年3月12日 (日) 09時31分

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