イタリア映画史を書く:その(5)
今回、『永遠の映画大国 イタリア名画120年史』を出して集英社新書で出して興味深かったのは、3年近く前に『美術展の不都合な真実』を出した新潮新書との違いだった。もともと新潮社の方は、先方からの突然の依頼に始まった。
会ってみると、新潮新書は初版が12,000部という。担当のKさんは「じっくりと売れてゆく本になると思います」。既に目次もでてきていて、社内会議でゴーサインが出ていた。もう美術展のことは書く気がなかったが、会って話すうちに乗せられてしまった。結果は追加で3,000部、2,000部を増刷の3刷で、台湾で中国語版まで出た。
集英社新書の場合は私からの持ち込み。新潮社の若い担当者から「お会いしたい」というメールが来て、企画書を書き直して序文を書いて会議にかけてもらい、正式なOKが出た。1年強かけて書き終わって初めて「ところで何部刷るのでしょうか」と聞いたところ、「7,000部だと思う」とのこと。
最終的には営業サイドの判断で6,000部に。新潮新書の半分だが、それでも出してくれたのはありがたかった。集英社新書に中条省平さんのフランス映画史と四方田犬彦さんの日本映画史が出ていたのが大きかったのではないか。彼らの本は著者が有名なこともあってロングセラーになっている。
新潮新書の時は、刊行直後に担当者が数本のインタビューを仕込んだ。「サンデー毎日」や「東洋経済オンライン」から「週刊実話」や「アサヒ芸能」まで。もちろん『美術展の不都合な真実』はある種の暴露本だから、売り込みやすいのは間違いない。今回の集英社新書は映画史の本だからか、インタビューは今のところない。
その分、自社メディアでのネット記事に協力した。私のイタリア映画の先生というべき柳澤一博さんと岡本太郎さんとの対談に、私がお勧めのイタリア映画10本をオールタイム、土地の魅力、21世紀の映画で10本ずつ挙げた。これは雑誌のインタビューよりずっときつかった。
さらに、イタリア文化会館で4月20日に「イタリア映画祭プレイベント」としてベロッキオの『結婚演出家』を上映して、この本についてトークをすることになった。これは私が会館にお願いした。上映前とトーク後に、本を1,100円のところ1,000円で私と編集担当Kさんが売る予定。今回はこんな感じで、マッチポンプか自転車操業に近い。あまり観客が少ないとカッコ悪いので、ぜひみなさんおいでください。
宣伝ついでに書くと、イタリア映画とは関係ないが先日行った新潟国際アニメーション映画祭について「論座」に書いた。これは明日の10時までは無料で読める。そんな感じでいつまでたっても暇にならない。
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