忽然と始まった新潟国際アニメーション映画祭:その(2)
結局、新潟に行ったのはわずかに2泊で見た映画はわずかに6本でうちコンペは3本。これでこの映画祭のセレクションについて語るのは難しい。22日の表彰式でグランプリを取ったのはフランス=カナダ=オランダ=ルクセンブルグ合作のピエール・フォルデス監督『めくらやなぎと眠る女』で、たまたま見ていた。
原作は村上春樹の短編5本。舞台は日本だが、全員が英語を話す。日本人の造形はよくできているが、昔の「ガロ」系の漫画のようでどこか気持ち悪い。そしてダメ中年社員のカタギリが流暢な英語で話し出すと、最初は違和感があった。
カタギリは信用金庫に勤務しており、無理な借金の回収を命じられる。なぜか現れた人間と同じ大きさのかえるに助けられて、その回収は成功する。同じ会社にいるコムラは妻のキョウコが大震災後にテレビばかり見ていた。ある日妻は「あなたは空気の塊のようだ」という言葉を残して家を出る。
コムラは会社の休みを取って北海道に行き、友人の妹に会う。妹についてきた女性と関係を持ったコムラは自宅に帰り、庭で近くの娘と話す。ざっとそんな内容だが、村上文学の思わせぶりで幻想的かつエロチックな奇妙な世界は再現されていた気がした。
あとで映画comの受賞結果の記事を読んだら、押井守審査委員長が「現代文学を映像化するのにはアニメーションが一番向いている」と語っていたのはそうだと思った。人間と同じ大きさのかえるが出てくる時点で実写は無理だ。幻想的な要素のある大江健三郎の小説なども向いている気がする。
グランプリ以外に傾奇賞が『カムサ 忘却の井戸』(アルジェリア)、奨励賞が『ヴァンパイア・イン・ザ・ガーデン』(日本)、境界賞が『四つの悪夢」』(オランダ/フランス)だった。私は牧原亮太郎監督の『ヴァンパイア・イン・ザ・ガーデン』は見たが、技術的にはすばらしいものの、物語がどうしても理解しにくかった。
人類がヴァンパイアとの戦争に破れ、小さな都市に集まって暮らしている。そこに住む女性司令官の娘、モモはヴァンパイアの女王、フィーネと出会う、2人は人類とヴァンパイアが共存できる「楽園」を目指す。そんな話だが、あちこちが謎ばかり。ネットフリックスのシリーズものが元になっているようなので、いろいろなエピソードがあるのかもしれない。
いずれにしても、これは『めくらやなぎと眠る女』とは違ってバリバリの商業映画だ。フランス映画『プチ・ニコラ パリがくれた幸せ』はその中間で、6月に日本のアート系の劇場で公開される。「プチ・ニコラ」を生んだ漫画家のサンペと作家のゴシニがいかにこの人気漫画を生んだかが、丁寧に語られる。
長編アニメは実写以上に種類が豊富で、ゴリゴリの前衛映画から人気抜群の作品まである。これを一つに並べてコンペにするのはかなり難しい気がしてきた。
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