忽然と始まった新潟国際アニメーション映画祭:その(1)
新潟国際アニメーション映画祭に来ている。今年が第1回というが、10日ほど前に誘われるまでその存在も知らなかった。2020年、新潟に開志専門職大学ができて、翌年からアニメ・マンガ学部が始まった。それがきっかけになって始まった映画祭のようだ。
その特徴としては長編アニメのコンペを中心にしたことで、これは珍しいという。一番有名なフランスのアヌシー国際アニメーション映画祭には長編コンペ部門はあるが、もともとは短編コンペから始まっておりこちらが花形らしい。
まず事務局にIDカードを取りに行くと、外国の監督に流暢な英語で説明しているのは世界各地の国際映画祭でコーディネーターとして活躍しているIさんだし、プレス担当はNさん。会場まで街を歩き出したら日本でも公開するコンペ作品『プチ・ニコラ パリがくれた幸せ』の宣伝をしているSさんにチラシをもらう。
会場に行くと、高崎シネマテークのKさんが運営チームとして活躍していた。さらにパリに住んでいるTさんがフランス人のプロデューサーを連れて歩いていたり、東京国際映画祭の元プログラマーYさんがいたり。あるいはアニメ研究者の知人に何人もあった。
会場には毎日発行される「デイリーニュース」(新潟日報編集・制作、英語付き)があってびっくり。さらにそこには「朝日」のO記者ほか外国人2人を含む5人の「星取表」まである。さらに会場で私の大学の学生から声をかけられたが、「新潟アニメーションキャンパス」に参加しているという。交通費、滞在費など映画祭持ち。
これは映画祭の審査委員長の押井守監督を始めとして新潟に来ている監督やプロデューサーから6日刊授業を受けて、空いた時間に自由に映画を見るという。その運営の統括をこれまたパリに住むOさんがやっていて、これも久しぶりの再会。
映画祭自体は長編コンペのほかに「世界の潮流部門」「レトロスペクティブ部門=今年は大友克洋」「イベント=押井守、りんたろう、片淵須直らのトーク」のほかに「フォーラム」と称する国際合作などのテーマ別シンポが4つもある。
会場は上映が「新潟市民プラザ」を中心に映画館2館を含む4会場。そのほか大学など数カ所でイベントがある。いずれも徒歩範囲がいい感じ。あちこちの商店街には映画祭の旗がはためく。つまり、第一回にして地方の国際映画祭で必要なすべてが揃っている。
これはこの映画祭の実行委員長であり、ユーロスペース代表で開志専門職大学マンガ・アニメ学部長の堀越謙三さんが中心になっているからだろう。彼の国際的な経験と人脈で必要なものと人を集めた感じがした。通常の地方の映画祭にありがちな県や市の役所の匂いがしない。
あえて足りないものを挙げると地元の熱気だろうか。山形国際ドキュメンタリー映画祭のような地元の方々が作りあげ、参加している感じが薄い。東京やパリからの落下傘部隊も多いし。客も東京からのアニメファンが多い雰囲気。
上映作品については私はアニメは詳しくないし、数本しか見なかったので語るのは難しい。ただ『プチ・ニコラ』(映画自体はおもしろい)のように既にフランスのアヌシー映画祭で最高賞を取っていて公開が近い作品をコンペに入れる必要があったのかとは思った。
個人的には、コンペのピエール・フォルテス監督『めくらやなぎと眠る女』は村上春樹の短編5本を原作とした舞台が東京の英語の作品で、かなり強烈な印象を持った。それから公共ホールなのに映写がずいぶんしっかりしている。音もいい。
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